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森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

ズキズキかビリビリか…「痛みの強さ」を医師に伝えられますか?

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痛みに言語はない

  この状況を 揶揄(やゆ) し、かつてインターネット上をまことしやかに流れた“ニュース”がある。「わが国の『標準化単位認定評議会(?)』では、痛みの単位として『hanage』を用いることを可決した。鼻の粘膜の感受性は、人体の中で最も個人差が小さい(?)ことから、長さ1センチの鼻毛を鉛直方向に1ニュートンの力で引っ張り、鼻毛が抜けた時に感じる痛みを1ハナゲとする」。ちなみに、足の小指をいすの角にぶつけた時の痛みは2~3ハナゲ、出産の際の痛みは2.5~3.2メガハナゲとなるそうだ。余談ではあるが、同じく評議会は、おやじギャグがひとつ滑った時の静けさを表す単位として「1カエレ」、英語表記では「ghm」(ゴーホーム)を提唱しているらしい……と、冗談はここまで。

 本題に戻るが、痛みの性質を確認する方法として、1975年に、カナダ・マギル大学の生理学者メルザックが考案した「マギル・メルザック式 疼痛(とうつう) 質問表」がある。1~20群に分類された78の痛みを表現する単語で構成されており、各々の単語に与えられた得点を加算して評価指数とするのだ。日本語訳版も数多く作成されてはいるものの、日本語では痛みの表現にズキズキやビリビリといった擬音語、擬態語(いわゆるオノマトペ)が多いが、そのニュアンスを十分に反映しているとは言い難い。日本特有の生活様式、文化、風土に即した固有の表現を分析した上での、標準的な質問表の作成が望まれるところではある。

 ―痛みに言語はない、痛みは言語的客観化を拒んでいる― エレイン・スカーリー

 患者さんに行っている治療法が正しいのか、痛みは軽減しているのかを判定することは、極めて難しい。点数ですべてが解決するわけではない。個々の患者さんの表情、日常生活動作の改善度に加えて、きちんと眠れているのか、食欲はあるのか、そして楽しいことを見つけられたのか、などを確認することから、まずは始めてみようか。(森本昌宏 麻酔科医)

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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