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医療・健康・介護のコラム

『思春期に心が折れた時 親がすべきこと』 関谷秀子著

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『思春期に心が折れた時 親がすべきこと』 関谷秀子著

 「発達障害」「強迫性障害」「注意欠如・多動性障害」……。とくに思春期の子どもの行動に問題が見つかると、現代ではすぐに「〇〇障害」と病名がついてしまう傾向にある。

 精神疾患は「治りにくい」、もしくは「治らない」ものがほとんど。子どもに病名がついてしまえば、親は悲嘆し、右往左往する。そんな親の姿を見て、子ども自身も将来への不安から、さらに症状が悪化したり、自暴自棄になったりしてしまうことがある。

 だが、簡単に病名をつけられてしまった子どもたちは、本当に病気なのか――?

 本書の筆者は、精神科医として数えきれないほどの子どもの心に向き合ってきた臨床経験から、引きこもり、登校拒否、暴力的行動、摂食障害などが顕在化する背景には、実は親子関係、それに両親の夫婦関係における問題が隠れていることが多いと指摘する。

 原因が子どもの内面ではなく、家庭の環境にあるとすれば、投薬治療も認知行動療法も意味をなさない。それは病気ではないのだから。

 第二次性徴を迎える年齢になると、子どもは自身の心と体の変化に戸惑い、迷い、悩むようになる。彼ら、彼女らの健全な成長、そして発達を促すためにも、周囲の大人が自分の問題として考え、自らの内面に向き合うことは必要不可欠だろう。

 ヨミドクターで大きな反響を呼んだ連載「思春期の子どもを持つあなたに」に加筆し、親が「できること」「すべきこと」に焦点を当てた本書。難しい世代の子どもを持つ親なら、問題の有無にかかわらず、子どもをまっすぐに成長させるために参考になる事例が数多く収録されている。

 日々、成長していく子どもの行動に不安を感じたら、医療機関に行く前に手に取ってほしい一冊だ。

 (中公新書ラクレ 860円、税別)

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