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中川恵一「がんの話をしよう」

医療・健康・介護のコラム

座りすぎはがんを招く

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30分のウォーキングで発がんリスク8%減

 座りすぎの健康リスクを帳消しにするためには、1日に60分以上の運動が必要とされており、これは現実的には実行が難しいでしょう。先のMDアンダーソンがんセンターの研究では、座っている時間30分をウォーキングなど軽度な運動に充てることで、発がんリスクを8%下げることができるとしています。さらに、中度の運動に置き換えれば31%ものリスク低下につながるといいます。

 なぜ座りすぎると死亡リスクが高まるのか。詳しいメカニズムはまだわかっていませんが、長時間座り続けることで血流が悪化し、筋肉の代謝の低下、その他のホルモンバランスの変化など、複数の要因が関係しているといわれています。

 では、具体的に座りすぎによる健康リスクをどう軽減するか。仕事中でも、動くことを意識することが大切です。30分に1回は席を立って、トイレに行ったり、飲み物を取りに行ったり。それが難しいなら、軽いストレッチやふくらはぎを軽くもむとか、足の指でグーパーを作るような動きをします。

「健康ゆすり」の普及を

 おすすめしたいのは「貧乏ゆすり」です。在宅勤務なら人目を気にする必要はありませんが、いかんせんネーミングが悪い。私は「健康ゆすり」と呼び名を変えて普及させたいと考えています。

 座りすぎはがんを増やすだけでなく、心にも悪影響を及ぼします。1日12時間以上座っている人は、6時間未満の人と比べて、メンタルヘルスの悪い人が約3倍も多いという調査もあります。

 コロナ禍がきっかけとなり、新しい日常として定着しつつある在宅勤務ですが、健康のためには、長時間座り続けて仕事をしない工夫が必要といえそうです。(中川恵一 放射線科医)

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中川 恵一(なかがわ・けいいち)

 東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。
 1985年、東京大学医学部医学科卒業後、同学部放射線医学教室入局。スイスPaul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、社会保険中央総合病院(当時)放射線科、東京大学医学部放射線医学教室助手、専任講師、准教授を経て、現職。2003~14年、同医学部附属病院緩和ケア診療部長を兼任。患者・一般向けの啓発活動も行い、福島第一原発の事故後は、飯舘村など福島支援も行っている。

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