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中川恵一「がんの話をしよう」

医療・健康・介護のコラム

座りすぎはがんを招く

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男性の膵臓がん 女性の肺がんのリスク増加

座りすぎはがんを招く

 在宅勤務がニューノーマルになりつつあります。通勤や得意先への訪問などがなくなり、自宅で長時間座ったまま仕事を続けると、がんを含めた病気のリスクが上がります。

 日本でも、仕事中に長時間座っていると発がんが増えるという研究結果が出ています。国立がん研究センターの研究グループは、50~74歳の約3万3000人を追跡調査した結果、座ったまま仕事をすることが多い男性では膵臓(すいぞう)がんが、女性では肺がんが有意に増加することを確認しました。 

 オーストラリアなどの研究によると、コロナ禍以前から、日本は世界の中でも座っている時間が長い国として知られています。日本人が平日に座っている時間は1日7時間と、調査対象の20か国中、最長でした。

 アメリカでは座ったままの健康リスクが知られるようになっており、シリコンバレーの大企業を中心に、立ったまま仕事ができる「スタンディングデスク」が増えています。日本人にはそういう認識が欠けている上に、コロナ下でのアンケートでは、在宅勤務をしている人の8割近くが「座っている時間がさらに増えた」という結果が出ており、健康リスクを危惧しています。

 座っている時間が長いほど運動不足になって、肥満になりやすいのは当然です。ただ、運動をしていても、座っている時間が長いとがんが増え、死亡率も高くなるというデータがあります。ですから、平日の座りすぎを週末のジムで解消するというわけにはいかないようです。「座りすぎ」と「運動不足」は別の問題として考えたほうが良さそうです。

発がんリスク1.82倍に

 2020年6月、一流医学誌に掲載されたアメリカのテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究では、対象の約8000人に加速度計を装着してもらい、座っている時間と動いている時間を連続する7日にわたって、正確に調べました。座っている時間を3群(短、中、長)に分け、短い群を1とすると、長い群のがん死亡率は、1.82倍という結果でした。

 WHO(世界保健機関)によると、喫煙が原因で年間700万人以上の人が亡くなっていますが、飲酒は300万人、そして座りすぎによる死亡は200万人とされていますから、大きな健康リスクといえます。

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中川 恵一(なかがわ・けいいち)

 東京大学医学部附属病院放射線科准教授、放射線治療部門長。
 1985年、東京大学医学部医学科卒業後、同学部放射線医学教室入局。スイスPaul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、社会保険中央総合病院(当時)放射線科、東京大学医学部放射線医学教室助手、専任講師を経て、現職。2003~14年、同医学部附属病院緩和ケア診療部長を兼任。患者・一般向けの啓発活動も行い、福島第一原発の事故後は、飯舘村など福島支援も行っている。

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