文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

宋美玄のわーままクリニック

医療・健康・介護のコラム

緊急避妊薬が薬局で買えるようになって困ることはありますか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

「性教育」と「避妊法へのアクセス」 改善は同時に

緊急避妊薬が薬局で買えるようになって困ることはありますか?

 コンドームが外れたり、破れたりして焦った、生理が予定日に来なくてヒヤヒヤしたという経験のある方は少なくないでしょう。利用者の視点だと、不安な時に近くの薬局で買えたら、早く服用することができてよいと考えると思うのですが、メディアやインターネット上には、「安易にアフターピルを使わないよう、性教育の充実が先」「悪用が心配」などの慎重論も見られます。

 日本は、性教育が充実しているとは言えず、学校教育では性行為そのものについては教えられません。昨年、行われた産婦人科医の有志によるアンケート調査では、「患者さんと接する中で、性教育が行き届いていると感じるか」という質問に対し、94.9%の産婦人科医が、「そう思わない」「非常にそう思わない」と回答しています。緊急避妊薬を入手しやすくするだけでなく、男女ともに、性と生殖に関する知識の向上が必要であることに、異論のある人は少ないでしょう。

 しかし、性教育がこれから充実したとしても、すでに学校教育を終えた人に届けるのは困難です。「性教育の充実が先」と言ってしまうと、十分な性教育を受けられなかった世代(つまり、現状では人口のほとんど)が、知識も不十分なまま、避妊法へのアクセスも改善されないままになってしまいます。性教育の充実と避妊法のアクセス改善は、「同時に」行われるべきだと考えます。

性暴力の被害者にとっても重要

 悪用への懸念については、現状でも、医療機関を受診すれば低用量ピルやアフターピルなどのホルモン剤の処方を受けることができますし、非合法のインターネット販売を利用すれば、男性でもアフターピルを入手することができます。緊急避妊薬が薬局で買えるようになることで、新たに悪用のリスクが生まれるということではありません。「コンドームをつけずにセックスしようとする男性が増える」と心配する人もいますが、現状でもつけない人はつけません。

 繰り返しになりますが、コンドームは性感染症の一部を防ぐのが主な役割で、避妊法として確実とは言えません。妊娠を望まない女性には、低用量ピルやIUS(子宮内避妊システム)などの、自主的に使えて、より確実な避妊法を強くおすすめします。

 緊急避妊薬は、性暴力の被害者にとっても非常に重要な薬です。17年度の内閣府男女共同参画局調査では、無理やり、性交等される被害に遭った女性のうち、警察に相談したのは2.8%、医療関係者に相談したのは2.1%、ワンストップ支援センターに相談したのは0.7%にとどまっています。ワンストップ支援センターの存在を周知し、啓発することも急務ですが、薬局で緊急避妊薬を買えるようになれば、被害に遭った人が、せめて緊急避妊だけでも行うことができるようになります。

2 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

son_300

宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。
1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。 詳しくは宋美玄オフィシャルサイト

過去コラムはこちら

宋美玄のママライフ実況中継

宋美玄のわーままクリニックの一覧を見る

2件 のコメント

コメントを書く

犯罪被害者を守るためにも

薬局での緊急避妊薬販売に一票

 薬局での緊急避妊薬販売について、まずは性暴力被害者を、望まぬ妊娠から守ることを第一に考え、できるだけ早く薬局での販売許可をする必要があると思い...

 薬局での緊急避妊薬販売について、まずは性暴力被害者を、望まぬ妊娠から守ることを第一に考え、できるだけ早く薬局での販売許可をする必要があると思います。これは重要な人権問題です!
 宋医師が紹介されているように、性暴力の被害者からの告発が、非常にまれであることは大きな要因です。実際、警察や病院受診に時間がかかることなどを考えあわせ、また現実に、加害者が恋人や家族であったりし、被害に感情や生活問題が絡んでいる、という事情があるでしょう。
 緊急避妊薬を入手容易にして、まずは被害者の体を守ることが先決です。中絶などは、その後、被害者の方の健康に悪影響を及ぼし、以降の妊娠にもかかわり得ます。議論されているような周辺問題は、追って対策を打つべきでしょう。

つづきを読む

違反報告

政治的課題の困難は価値観の多様性との対話

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

誰かが得をすれば誰かが損をする。 それが社会の仕組みです。 社会が善人だけで構成されていない以上、1人の人間の中に天使と悪魔が同居する以上、政治...

誰かが得をすれば誰かが損をする。
それが社会の仕組みです。
社会が善人だけで構成されていない以上、1人の人間の中に天使と悪魔が同居する以上、政治的問題は避けて通れません。

お一人様が増えているのに、教育体制も不十分なのに、アフターピルなんかいるのか?
そんな一つ一つの議論の中に、正論もあるので、攻撃的な物言いは良くないでしょう?
一方で、様々なエゴを認めつつ、性的被害者の被害を少しでも減らすという観点のエゴを大きくするのが大事なのではないかと思います。
遠隔画像診断だって、結局、地域のメンツや司法も絡んだ諸々の問題の為になかなか進みません。

僕自身も、なかなか、やりきれない問題で悩んだこともありますが、おそらく論理的に正しい意見と同時に、論争の相手である個人や組織を政治的に納得させる条件も大事になるのではないかと思います。
アフターピルが、販売後短時間のみ使用可能なら悪用しづらいかもしれませんね。
他にも、何らかのくくりがあれば、多少はマシになるかもしれません。
衆知を集めることが大事だと思います。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事