宋美玄のわーままクリニック
医療・健康・介護のコラム
緊急避妊薬が薬局で買えるようになって困ることはありますか?
先週、政府が、緊急避妊薬(アフターピル)を薬局で買えるようにすることを検討するというニュースが飛び込んできました。2011年にノルレボ(レボノルゲストレル)という製剤が緊急避妊薬として承認されましたが、現在は医師の処方が必要なため、緊急避妊を希望する人は、医療機関を受診しないといけない仕組みになっています。また、費用も数千円~2万円程度で、入手しやすい金額とは言えません。
18年のWHO(世界保健機関)の勧告には、「意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての人には緊急避妊にアクセスする権利がある」とありますが、残念ながら、日本ではその権利が守られているとは言えない状態でした。そのため、多くの人や団体が、緊急避妊薬をオンライン診療や薬局で買えるように運動してきました。コロナ禍をきっかけに、初診からオンライン診療を受けることが一部、認められ、緊急避妊薬の処方もその対象となりましたが、薬局での販売には日本産婦人科医会などの反対もあり、実現へのハードルは高いと思われていました。そのため、このニュースにはとても驚きました。リプロダクティブヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の観点から、実現することが望ましく、本当にそうなればとてもうれしいです。
コンドーム使用での妊娠率は年間14%も
緊急避妊薬は多くの国で、薬局で売られています。日本で処方されているノルレボには重篤な副作用はありませんが、72時間以内に内服して、避妊率が9割程度ですので、「確実な避妊」と言えるほどの効果ではありません。しかし、ノルレボの承認以前に頻用されていたヤッペ法(中用量ピルを2錠飲み、12時間後にもう2錠飲む方法)に比べると避妊率は高く、吐き気やだるさなどの副作用もかなり少ないです。
インターネット上で見かける緊急避妊薬の副作用に関する議論の中には、「ヤッペ法と混同しているのでは?」と思われるものが多いようですが、ノルレボは副作用の強い薬ではありません。ただし、緊急時のための薬であり、継続的かつ確実な避妊のためには、コンドーム単独やアフターピルよりも、低用量ピルの服用の方が確実です。コンドームの妊娠率は、通常の使用法だと年間14%と高く、避妊というより性感染症の一部の予防という位置付けが正確です。
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薬局での緊急避妊薬販売に一票
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薬局での緊急避妊薬販売について、まずは性暴力被害者を、望まぬ妊娠から守ることを第一に考え、できるだけ早く薬局での販売許可をする必要があると思います。これは重要な人権問題です!
宋医師が紹介されているように、性暴力の被害者からの告発が、非常にまれであることは大きな要因です。実際、警察や病院受診に時間がかかることなどを考えあわせ、また現実に、加害者が恋人や家族であったりし、被害に感情や生活問題が絡んでいる、という事情があるでしょう。
緊急避妊薬を入手容易にして、まずは被害者の体を守ることが先決です。中絶などは、その後、被害者の方の健康に悪影響を及ぼし、以降の妊娠にもかかわり得ます。議論されているような周辺問題は、追って対策を打つべきでしょう。
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誰かが得をすれば誰かが損をする。
それが社会の仕組みです。
社会が善人だけで構成されていない以上、1人の人間の中に天使と悪魔が同居する以上、政治的問題は避けて通れません。
お一人様が増えているのに、教育体制も不十分なのに、アフターピルなんかいるのか?
そんな一つ一つの議論の中に、正論もあるので、攻撃的な物言いは良くないでしょう?
一方で、様々なエゴを認めつつ、性的被害者の被害を少しでも減らすという観点のエゴを大きくするのが大事なのではないかと思います。
遠隔画像診断だって、結局、地域のメンツや司法も絡んだ諸々の問題の為になかなか進みません。
僕自身も、なかなか、やりきれない問題で悩んだこともありますが、おそらく論理的に正しい意見と同時に、論争の相手である個人や組織を政治的に納得させる条件も大事になるのではないかと思います。
アフターピルが、販売後短時間のみ使用可能なら悪用しづらいかもしれませんね。
他にも、何らかのくくりがあれば、多少はマシになるかもしれません。
衆知を集めることが大事だと思います。
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