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網膜剥離 失明の恐れも…見え方に異変 受診を

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 目の網膜がはがれて、視力が低下する網膜 剥離はくり は、失明のおそれもある病気です。加齢のほか、強い近視の人や目に強い力が加わることなどで発症します。目の前に虫や糸くずが見える、チカチカと光が見える、といった症状が突然出てきたら、早めに受診することが大切です。(冨山優介)

網膜剥離 失明の恐れも…見え方に異変 受診を

  加齢で眼球劣化

 眼球の中は「 硝子体しょうしたい 」というゼリー状の物質で満たされています。硝子体は眼球内の圧力を一定にし、球状の形に保ちます。硝子体の外側に、光に反応する「視細胞」がある網膜、さらに外側には網膜へ栄養を送る「脈絡膜」があります。

 硝子体は、加齢などで劣化すると、一部が液状になります。その影響で、眼球の動きに伴い、ゼリー状のままの硝子体に、網膜が強く引っ張られ、裂け目ができることがあります。「網膜 裂孔れっこう 」と呼ばれます。

 この裂け目に、硝子体が液化してできた水が入り込むと、網膜が脈絡膜からはがれてしまいます。これが、「網膜剥離」です。

 強い近視の人などで網膜の薄くなった部分に穴が開いたり、打撲などで眼球が急激に変形したりして発症することもあります。

  2種類の手術法

 厚生労働省の2017年患者調査では、網膜剥離の国内患者数(網膜裂孔も含む)は約5万8000人で、増加傾向にあります。

 主な症状は、目の前に蚊が飛んでいたり、糸くずなどが浮遊したりしているように見える「 飛蚊症ひぶんしょう 」、視界の中に瞬間的に光が生じたように見える「 光視症こうししょう 」などがあります。

 網膜は、脈絡膜からはがれると機能しません。はがれた部分が広がると、視界にカーテンがかかったようになる「視野欠損」が起こります。悪化が続けば視力が低下し、最終的には失明します。

 網膜のはがれた範囲が小さければ、レーザーで網膜を焼き付けたり、裂け目の周囲の網膜を瞬間的に凍らせて固めたりする治療をします。

 症状が進んでいる場合は、主に2種類の手術法があります。網膜復位術は、眼球の外側にスポンジを縫い付けます。はがれた裂け目の部分をふさぎます。

 硝子体手術は、直径約1ミリの細いカッターを目の中に差し込み、濁った硝子体を吸い取ります。眼球の形を保つため手術中は目の中に人工の水を流し、術後は空気やガスで満たします。はがれた網膜は内部からの圧力ではりつき、元に近い状態に戻ります。眼球内では「 房水ぼうすい 」という透明な液体が作られており、空気やガスは1~2週間程度で房水に置き換わります。

 ただ、網膜の中心にある「 黄斑おうはん 」がはがれていると、手術をしても、元の視力まで回復させることは難しくなります。

 術後は、再び剥離が起きることもあり、経過観察が必要です。車の運転などは、医師と相談した上で再開した方がいいでしょう。

 網膜剥離は、自覚症状のないまま進むこともありますが、飛蚊症や光視症は発症の前兆として起こる場合もあります。やすはら眼科クリニック(滋賀県高島市)院長の安原徹さんは、「早めに診断できれば、負担の少ない手術で悪化を止められます。見え方がおかしいと感じたら、眼科を受診してください」と話しています。

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