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精液検査の結果に「雑魚ばっかりですね」と医師 不妊治療も「仁術」であってほしい

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精液検査の結果に「雑魚ばっかりですね」と医師 不妊治療も「仁術」であってほしい

 残暑が厳しいと思っていたら、10月の声を聴いたとたん、すっかり涼しくなってきました。9月半ばの菅首相誕生以来、毎日、「不妊治療の保険適用」という言葉がマスメディアのどこかで見られるようになっています。そんな中、日本産科婦人科学会のホームページに2018年のART(生殖補助医療)のデータが公表されました。

16人に1人が体外受精児

 これによると、2018年にARTで生まれた子どもは5万6979人。これは過去最多であり、この数字は年々右肩上がりで増え続けています。18年の全国の出生数は91万8400人ですので、全体の6.2%、つまり16.1人に1人が体外受精以上の治療で生まれた計算になります。学校のクラスに2人はいるということです。さらに、これは人工授精を含まない数字ですので、これに人工授精を入れるとさらにパーセンテージは高くなるでしょう。これほど多くの子どもが、今やARTによって生まれてきているという事実があるわけですが、にもかかわらず、不思議なほどにその存在や実態は、あまり広く知られていないことをまだまだ実感しています。

 そうした中で、「不妊治療の保険適用」を大きく取り上げていただけることは、不妊治療の認知度向上につながり、ありがたいことです。しかし一方、あまりにも「保険適用」という言葉だけが独り歩きしているように思えてなりません。不妊治療の課題は、NPO法人Fineの設立当初から17年来、大きく4つあるとお伝えしてきています。それは「身体的負担」「精神的負担」「時間的負担」そして「経済的負担」です。

 確かに保険適用は課題の一部ではあるわけですが、もっと大きな根本的な課題は20年以上もほぼ変わらず、しかも大きく取り上げられることもありませんでした。もちろん経済的負担の軽減は非常に大きな課題ではあります。しかし、そこにとらわれ過ぎると、各論で終始してしまいかねないことが危惧されます。この機会にもっと大局も見ていただきたいと願わずにはいられません。

困難な施設選び わかりやすい情報開示を

 その重要なものの一つは「不妊治療施設に対する公的なガイドライン作成と、わかりやすい情報開示の徹底」です。体外受精等の不妊治療ができる施設は全国に600軒以上ありますが、患者はどういう視点で自分に合ったところを選べばよいか、それは全く示されていません。治療方針や治療方法もバラバラであり、患者にとっては非常にわかりにくいものです。治療成績一つ開示されていないままでは、全く調べようがありません。ぜひとも、何らかのガイドラインを作っていただきたいところです。

 治療成績の開示が進まない理由の一つとして、「治療成績を開示することが、かえって患者を惑わせることになる」という声も聞かれます。確かに、一律に「治療成績」といっても、例えば20代の患者が多いところと40代の患者が多いところでは、おのずとその数値は違ってくるでしょう。極端な話、年に10人の患者の治療(しかも25歳以下)しか行っていない医療施設で、その半数の5人が出産したとしたら、出産率は50%になるわけです。もし「出産率50%」という数字を見たら患者は飛びつくでしょう。そうした数字のマジックは起こりえることなので、開示しない理由としては理解できます。

治療成績は分母、分子を一律にして開示を

 しかし、もしそうであれば、患者の年代別、既往歴別、不妊原因別、など、ある程度区分けをつけて、その結果を出すことは可能なのではないでしょうか。治療成績開示において大切なポイントは2点。1点目は「分母と分子を全施設で一律のものにし、明確にする」こと。そして、2点目は「妊娠率」だけでなく「出産率」も開示すること、です。

 さらにいうと、出産率に関しては、注意すべきことがさらに2点あります。1点目は、やはり分子と分母を何にするか、です。「生まれた子どもの数」を分子にするか、「産んだ母の数」を分子にするかで、その数字は若干違ってきます。今はさほど多くはありませんが、双子や三つ子の可能性があるからです。子どもでカウントした場合、いうまでもなく出産率は高くなるわけです。しかし患者からすると、「自分は」出産できるのだろうか、が最も重要な知りたいことですから、ここは「生まれた子どもの数」ではなく、「産んだ人の数」で数えるべきでしょう。

 また、もう1点は、出産率は「確実な数は出ない可能性がある」ことです。なぜなら現在、不妊治療施設を卒業した患者が自己申告で送ってくる通知でしか、出産の確認が取れないため、実際の数字よりもやや低くなるかもしれないからです。いずれにしても、患者にとって「妊娠」はゴールではなく、「出産」そして「その後の育児」こそがゴールであることを忘れてはなりません。妊娠できても流産を繰り返してしまう「不育症」もあります。それらを含んでの「不妊・不育の患者の願い」は生産率、つまり「1日も早く赤ちゃんを抱っこしたい」なのです。

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松本亜樹子(まつもと あきこ)

NPO法人Fine理事長/国際コーチ連盟認定プロフェッショナルサーティファイドコーチ

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

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