常喜眞理「女のココロとカラダ講座」
医療・健康・介護のコラム
「香りと味がしない」という30代女性 コロナではなかったが手術へ…鼻詰まりは放置しないで
「最近、香りと味がしなくなった」と言って、30歳代後半のIさんが来院した。何かおかしいと気づいたのは、2か月ほど前だという。初めは月経周期や体調のせいかもしれないと思い、気にしないようにしていた。ところが先日、家族が「冷蔵庫内の臭いが気になる」と言い出したのに自分だけわからず、家族からも受診を勧められたのだという。新型コロナ感染での嗅覚低下を耳にすることもあり、心配になったそうだ。
コロナは陰性 しかし、「好酸球」の割合が高く
熱はなく、咽頭の痛みなどもない。時間の経過を考えれば、コロナの可能性は低かったが、いつから嗅覚の低下があったのかがわかりにくかったため、コロナ検査と血液検査を行った。コロナ検査は陰性で、血液検査でも内臓関係の数値に異常はなかった。しかし、白血球の種類で「好酸球」というものが通常より高く、8%となっていた。これは「好酸球性副 鼻腔 炎」の特徴の一つだ。
鼻詰まりや鼻炎について聞くと、ホコリやダニのほか、花粉症によるアレルギー性鼻炎の持病もあった。日常的に鼻水や鼻詰まりの状態だったため、慣れっこになっていたようだ。子供の頃は、 喘息 だと言われたこともあるという。鼻専門の耳鼻科医師への受診が必要であると話し、紹介をした。
内視鏡手術で改善
専門医による診断は、やはり好酸球性副鼻腔炎。手術が必要であることがわかった。昔と違い、鼻においても内視鏡を使った手術が広く行われ、術後のつらさも格段と軽減している。
Iさんは幸い、術後の経過もよく、鼻の通りがよくなり、その後、嗅覚・味覚がかなり戻ってきた。残念ながら、この病気は完治するわけではなく、継続的な治療が必要だ。原因ははっきりせず、難病指定されているが、それほど珍しい病気ではない。鼻の中に 鼻茸 と言われるポリープができ、粘膜もむくんで、においや味がわからなくなってくる。好酸球が血液中に増えたり、中耳炎を起こしたり、喘息との合併も多いことが知られている。長く放置すると、治療をしても嗅覚が戻らないこともある。“いつもの鼻詰まり”と放っておかないで、早めに耳鼻科に相談される方がいい。
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