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常喜眞理「女のココロとカラダ講座」

医療・健康・介護のコラム

「香りと味がしない」という30代女性 コロナではなかったが手術へ…鼻詰まりは放置しないで

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39種類を一度に検査

 今年、大学に入学したMさんは、いつも鼻水に悩まされていた。スギ花粉の時期や、猫に近づいた時に、目のかゆみや鼻水などの症状が出てくるため、アレルギーがあることは自分でも気づいていたが、一度も検査をしたことがなく、調べて診断してほしいと来院された。

 アレルギーについては、鼻水・くしゃみなどを起こす花粉やダニ・ホコリといった吸入系の物質と、アレルギー反応を起こしやすい食べ物について、39種類を一度に調べることができる検査が普及している。

 Mさんは、食べ物への反応は見られず、スギ、ヒノキ、特にダニとハウスダストに対する反応が強く表れた。これまで、つらい時だけ、抗アレルギー薬を飲んできたが、効かない時もあるという。ダニとハウスダストのアレルギーは、一年中苦しむことになるため、Mさんには、ダニアレルギーに対する舌下療法という治療を提案してみた。

原因物質に慣れさせる舌下療法

 アレルギーの原因となる物質を少しずつ体に入れることにより、体を慣れさせ、アレルギー症状を緩和していく治療法だ。毎朝、家で、口溶けする錠剤を1分ほど舌の下に置き、その後飲み込む。初回は必ず医療機関の中で、重大な副作用が起きないかを確認しながら行う。1分間保持するため、タイマーで計ってもらうが、薬はラムネのようにすっと溶けてしまうので、飲み込まずに1分間、がまんするのは意外に長く感じる。

 Mさんは問題なくできたので、初めに使う低容量の薬を家で服用してもらい、1週間後からは、継続的に用いる容量に切り替えた。あとは2~3か月に1度、来院してもらい、経過を教えてもらう。Mさんは、3か月くらい治療して、ホコリでの症状が軽くなったと実感された。

 副作用には、口内炎や口の中の違和感が多いが、しばらく継続すると慣れてくる。3年ほどは継続が必要で、長い治療になるが、2回目からは家でできることや、しばらくして症状の改善を実感できるメリットは大きい。それまで内服していた症状を軽減する薬を併用しても構わないが、それも少しずつ減らせる可能性がある。

 すべての人が、期待する効果を得られるわけではないが、いつも薬を手放せないほど症状がひどい場合、特に将来、出産を控えている若い女性などは、妊娠中に抗アレルギー薬を使わずにすむことを考えると、舌下療法を受けておくことをお勧めしたい。スギの時期に備えて、今が始めるのにいい時期だ。(常喜眞理 医師)

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常喜 眞理(じょうき・まり)

 家庭医、医学博士
 1963年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。消化器病学会専門医、消化器内視鏡学会専門医・指導医、内科学会認定医、日本医師会認定産業医。院長を務める常喜医院(内科、皮膚科)での診療のほか、慈恵医大新橋健診センターでは診療医長として健康診断(人間ドック)の内科診察を行い、婦人科や乳腺外科の診断を担当する。様々な大手企業の産業医でもあり、職場におけるメンタルヘルスのサポートを長年行っている。著書に『オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(すばる舎)、『お医者さんがやっている「加齢ゲーム」で若返る!』(さくら舎)。現在、BS-TBS「Together」に準レギュラー出演中。

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