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医療・健康・介護のコラム
うちの子、低身長?…判断の目安と「治療が必要なケース」
病的なケースは5%
お子さんが低身長だと言われてしまうと、心配になられるのはごもっともです。何か病気が隠れているんじゃないか、治療した方がよいのではとか、気になる方も多いでしょう。ここで強調しておきたいことは、私たちが低身長での受診をお勧めするのは、「低身長だから病院で治療しましょうね」という意図ではないということ。「低身長の原因となる病気がないかを調べましょう」というのが正確です。
低身長には様々な原因があります。両親の身長が低い場合、体質による場合など、治療の必要がないことも少なくありません。しかし、その中にも、「病気による成長障害」が紛れ込んでいる可能性があり、それを見つけるために検査を行います。成長曲線が-2SDを下回るお子さんのうち、実際に治療が必要な「病的な低身長」の割合は、約5%とされています。 4)
脳腫瘍などが潜むことも
「病的な低身長」には、どんなものがあるのでしょうか。
成長ホルモンの分泌が悪い原因は、染色体の乱れ(ターナー症候群など)、骨の病気、SGA低身長(生まれつき小さく生まれ、その後の身長の伸びがあまりない場合)、甲状腺の病気、脳腫瘍、くる病、低栄養状態など様々です。特に脳腫瘍や甲状腺の病気などは、早く見つけなくてはいけません。
乳児期に健診で背が低いと言われて心配になったと相談されることもあります。しかし乳児期は、むしろ体重増加不良の方がずっと大きな問題で、この時期の身長について、それほど気にする必要はありません。基本的には、幼児期になってから低身長のスクリーニングを行っていくことになります。
病的な低身長を考える上で、「Target height(目標身長)」という指標を用いることがあります。Target heightは、よく「将来はこの身長になるという指標」と説明されることがありますが、これには注意が必要です。
Target heightは、両親の身長の合計±13÷2(男児は+13、女児は-13)で知ることができます。例えば、父親が166センチ、母親が155センチの場合、男の子なら、166+155+13÷2=167センチです。注意が必要なのはここから。成人身長の予測には幅があります。この幅を考慮した範囲を「Target range」といい、男の子はTarget height±9センチ、女の子はTarget height±8センチで求められます。さっきの男の子の例では、158~176センチとなり、これが将来の身長予測になります。
予測と言っても、とても幅が広いですよね。その子が現在、低身長とされている場合、今の成長曲線のカーブをたどって予測した成人身長が、このTarget rangeの範囲内にあれば病的でない可能性が高く、外れるようなら病気が潜む可能性があると考えます。つまりTarget heightは、「病的な低身長かどうか」を知るための目安として使うものなのです。繰り返しますが、予測の幅は非常に広いので注意が必要です。
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