がん患者団体のリレー活動報告
医療・健康・介護のコラム
NPO法人 血液情報広場・つばさ
年に7~十数回、患者さん向けのフォーラム・セミナー
とても大きな不安と疑問を抱えて血液の病気と闘う、患者さんとそのご家族に共感と最前線の医療情報を届けたいと思い、血液情報広場・つばさは、1994年から年に7回~十数回、日本各地でフォーラム・セミナーを開催しています。会場には、血液内科や小児科の先生方が、白衣を脱いで会場に足を運んでこられます。講師は、ほかに看護師(長期フォローアップ外来)、理学療法士(がんリハビリ)らも参加。会場では、患者さんやご家族が、不安や疑問を胸に、熱意あふれる講演に耳を澄まします。そして、たくさんのボランティア・スタッフが、フォーラム・セミナーの一日を支えます。

「知らせたい、知りたい」が会場に満ちるフォーラム。慶応大学医学部教授(当時)の岡本真一郎氏が血液がんの最新情報について講演(2014年6月、慶応大学で)
フォーラム・セミナーで大切なのは質疑応答
複数の疾患を扱う時は「フォーラム」、単一の疾患だけで企画する時は「セミナー」と呼んでいます。参加者は、個別の疾患や治療法、難しい医学専門用語の基本などについて、じっくり学ぶことができます。
大切にしているのは質疑応答です。理事長の橋本明子氏が、「どんなに個人的なことでも、遠慮せずにこの質問用紙に書いてください」と参加者に伝えます。どの会場でも全ての質問に、座長と講師の先生方が丁寧にアドバイスを返し、その熱意に会場全体が引き込まれます。

「疑問は、みな解消しましょう」と質問用紙を示す橋本理事長。右端は、座長で埼玉医科大学総合医療センター木崎昌弘氏(18年6月、高松市で)

ボランティアに支えられて開催されているフォーラム・セミナー(16年7月、東京都内で)

九州大学医学部の宮本敏浩氏ら講師が熱意を込めて講演(19年11月)
年2回、Newsletterひろばで情報発信

Newsletterひろば
原則7月と12月、会報誌「Newsletterひろば」を発行しています。フォーラムでの講演のまとめ、治験情報、疾患を乗り越えた経験者さんや患者会の情報などが掲載されています。「ひろば」は、患者さんとご家族、がん拠点病院の相談支援センターなどに向けて、5500部ほど発送されます。
昨年、YouTubeで 「つばさチャンネル」 を開設し、フォーラムの内容を動画配信しています。参加できなかった人も、いつでも視聴できるようになりました。
経験者の語りが共感を呼ぶ
フォーラムなどでは、経験者のお話もあります。血液がんは疾患数が多くて、治療も「経過観察」「錠剤服用だけ」「外来化学療法に通院」「造血細胞移植が必要」など、治療法も多岐にわたります。そのため、治療から受けた影響(副作用や後遺症)も本当にそれぞれです。
具体的に患者さんの語りの一部を紹介します。参加者はそれぞれ、思いを重ねながら聞き入っています。
《14年前に慢性骨髄性白血病の診断。ショックでしたが、退職はいつでもできるのだから、と副作用や不安感と闘いつつ、仕事を続けています。でも働くことは闘病の力でもあります》

「診断されても仕事は辞めないで」(稲葉恵美さん)
《16歳で急性リンパ性白血病に。1年間の薬での治療に無我夢中で耐えました。15年たって、ようやく気持ちが落ち着いて、いまやっと生きる手応えを語れるようになりました》

「白血病、薬のおかげで治りました」(斉藤裕子さん)
《17歳で血液がんに。でも本格的に悪化する20歳代まで、治療を拒否し続けました。その私が治療を受け入れられたのは、治療で失われる卵巣機能(卵子)が温存できたからです》

「卵子保存で闘う勇気をもらった」(後藤千英さん)
《9歳の時に兄から骨髄移植をしましたが、ずっと気力・体力がなく、生きにくい、と感じていました。ところが34歳でホルモン補充療法に出会い、心身ともにとても充実しました》

「ホルモン補充療法で34歳にして声変わり」(宮城順さん)
妊孕性について保険適用の請願
自身が卵子保存を経験した後藤千英さんの声から、2019年6月、つばさは厚生労働大臣あてに「小児がん・若年がん 罹患 者の 妊孕 性(精子・卵子保存)保険適用の請願」を提出しました。同年8月1日からは請願署名を開始しております。署名は日本中で集められて、多くの血液内科や病院の封筒からも送られてきております。皆で、頑張っています。
経験者の語りから次のテーマを
患者さんの経験と本音の感想から、つばさは新しいテーマも企画します。ホルモン補充療法(内分泌科)、卵子・卵巣の温存療法(産婦人科)、長期に輸血が必要な患者さんや家で過ごしたい患者さんのための在宅輸血や訪問診療などです。
いま必要な情報を、いま知りたいところへ。そして、いま必要なテーマを共有して明日への力に。血液情報広場・つばさの願いです。
NPO法人 血液情報広場・つばさ
1986年、つばさ理事長の橋本明子氏の長男が慢性骨髄性白血病(CML)と診断された。医師が「余命3~5年だが、骨髄移植ができれば治せるかも」「骨髄バンクが日本にもあれば」と言ったことから、骨髄バンク設立要求運動を開始した。
その頃から地方骨髄バンクが日本各地で設立されたが、骨髄移植の時に重要なHLA(白血球の型)の研究者に、「非血縁者との適合率は数百分の一から数万分の一くらい。誰にでも機会均等であるためには、国レベルの機構にする必要がある」と指摘され、骨髄バンク設立請願署名を開始した。
1989年夏に、77万人分の署名を国会に提出。同年11月の国会で総理大臣が骨髄バンク設立を「検討する」と答弁。その後、バンクが設立された。総理大臣の言葉を聞いて、「骨髄バンクの次に欲しかったのは的確な情報(疾患、治療法、薬、医療システム)だった」と思い、94年5月につばさの前身となる任意団体・日本つばさ協会を設立。2003年8月にNPO法人 血液情報広場・つばさとなり、以来、医・薬の情報発信活動を継続している。また、電話相談も受け付けている(電話03・3207・8503、月~金の正午~午後5時、祝日は休み)。
ホームページ http://tsubasa-npo.org/
このコーナーでは、公益法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。
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