40代から備えよう「老後のお金」 楢戸ひかる
医療・健康・介護のコラム
えっ、「介護をした嫁」は何も相続できないの!? 「貢献」を評価する法改正を知っておこう
裁判所に請求するには「証拠」が重要
今回の改正では、介護に貢献した人を相続の場で評価する制度ができたわけで、まずは一安心ですね。しかし、廿野さんはこう続けます。
「確かに、画期的なことだとは思います。ただ、実際に相続の現場に数多く立ち会ってきた身として思うのは、今回の法律は『いたたまれない人が救われる方法がひとつできた』くらいの使い勝手なのです。直美さんが、『遺産を全く配分してもらえなかった場合』を想像してもらうと、わかりやすいと思います。この場合、直美さんが、お 義母 さんと 義弟 さんに『介護の分を考慮してほしい』と、 自分から話を切り出す必要 があります。当事者で話がまとまれば、まだよいのですが、まとまらない場合は、家庭裁判所へ『協議に代わる処分』を請求する流れになります。なお、請求には、期限があるので注意が必要です」
●協議に代わる処分の請求期限
- ・特別寄与者が相続の開始があったこと及び相続人を知った時から6か月以内
または、 - ・相続開始から1年以内
(廿野さんへの取材をもとに筆者作成)
家庭裁判所で処分の決定をするにあたり、重要になってくるのが証拠です。証拠とは、寄与の時期、方法および程度を証明する書類など。でも、多くの場合、証拠なんて集めていないですよね。何だか、やりきれない気持ちになります。
「介護をしてくれた人」を法的に守るなら
義父母のほうが、「直美さんを法的に守りたい」と考えるなら、遺言を書くか、直美さんと養子縁組をすることで、この問題は防げます。遺言書を書く場合は、「直美に預金のうち●●円を遺贈する」などと、介護が始まる頃に、法的に有効な遺言書を作っておくのです。「自分の介護をしてくれた人を、きちんと法的に守るために必要な書類が遺言書なんです」と、廿野さん。直美さんが財産を必要としなければ、遺贈を放棄することもできます。
また、「現実的には、治療方針や介護方針を決めたり、入院時の保証人になったりするためには、直美さんと養子縁組をして家族になっておかないと手続きが難しいこともありえます。達也さん亡き後、お嫁さんである直美さんだけの介護ということであれば、こういったことも念頭に置いておいた方が無難です」(廿野さん)
「介護をする嫁」になる可能性があるのであれば、こういった知識があるだけでも、備えのひとつになりそうですね。(楢戸ひかる マネーライター)
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