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40代から備えよう「老後のお金」 楢戸ひかる

医療・健康・介護のコラム

えっ、「介護をした嫁」は何も相続できないの!? 「貢献」を評価する法改正を知っておこう

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 長男の嫁。この言葉は、今も「現役」なのでしょうか? 介護の担い手になりがちな「お嫁さん」ですが、これまで「相続の土俵」にすら上がれなかったのは、ご存じですか?(本記事で紹介する制度などに関する情報は、2020年9月末時点のものです)

えっ、「介護をした嫁」は何も相続できないの!? 「貢献」を評価する法改正を知っておこう

イラスト:赤田咲子

2世帯住宅に住む「お嫁さん」 夫が亡くなった!

 この話は、具体例で考えた方がわかりやすいでしょう。

 山本家の長男である達也さんと職場で出会い、恋愛結婚をした直美さん。新婚当初から、2世帯住宅で達也さんのご両親と同居をしていました。子どもはなく、直美さんは結婚退職後、パートに出た時期もありましたが、家にいるのが好きなので、基本的には専業主婦でした。

 義理の両親が75歳を過ぎたあたりから、それぞれの持病のための病院通いが始まりました。病院への付き添いは、当たり前のように直美さんの役目です。そんな生活のさなか、達也さんにがんが見つかり、達也さんは亡くなってしまいました。

「お嫁さん」には相続権がない

 達也さんの死後2~3年は元気がなかった直美さんですが、元来、明るく、世話好きな性格です。幸いお金に困ることもありませんでした。2世帯住宅で一緒に暮らしていた達也さんの両親に介護が必要になってくると、「これが、私の生きがいかもしれない」と、介護の資格をとることに。義理の親子ながら、手厚い介護をしてくれる直美さんのことを、達也さんの両親はとても頼りにしています。それもそのはず、達也さんには弟が1人いるものの、両親との折り合いが悪く、ほとんど音信不通だったのです。かろうじて連絡先はわかっていましたが、介護の全ては、直美さんが取り仕切っていました。

 こうした生活のなかで、直美さんの義父、つまり達也さんのお父さんが他界しました。人が亡くなれば、故人が残したもの(遺産)をどうするか、話し合う場面が必ず訪れます。

  民法(相続法)が約40年ぶりに改正されたことは、以前、書きました 。相続専門の税理士、 廿野(つづの) 幸一さんは言います。「介護でどんなに貢献したとしても、『お嫁さん』である直美さんは、法定相続人ではありません。法改正の前だったら、遺産をもらう権利がありませんでした」。え、そうなんですか!?

法改正で創設された「特別寄与料制度」

 「今回の改正で、特別寄与料制度が創設されました。特別寄与料制度とは、相続人ではない親族が、介護などの貢献について金銭を請求できる制度です。2019年7月1日以後に開始した相続に適用されます」(廿野さん)

 ここでキーワードとなるのは、 相続人ではない親族 です。このケースでいえば、直美さん。そもそも、「寄与」という言葉自体、耳慣れませんよね。調べてみると、「力を出し切ることで、社会や人の役に立つこと」と、ありました。

 介護の現実は、まさに「力を出しきる」という感じなのでしょう。介護などで寄与した分は、相続でもそれなりに評価をしようというのが今回の法改正の意図のようです。

 それにしても、いくら介護に貢献したとしても、以前は「お嫁さん」に相続の権利がなかったこと自体が、まず、驚きです。

 「改正前は、寄与を考慮してもらえるのは、相続人だけでした。達也さん亡き後、法定相続人は、義理の母と達也さんの弟だけです。達也さんの妻である直美さんは、相続という土俵で、財産分与の話し合いに参加する権利さえなかったのです」(廿野さん)

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楢戸 ひかる(ならと・ひかる)

マネーライター
 1969年生まれ。大手商社に勤務後、90年代よりマネー記事を執筆。「誰もが安心してお金のことを学ぶ場」である「お金のリビング」を主宰。その入り口として、「ザックリ家計簿」ワークショップをオンラインにて開講中。詳しくはホームページ「主婦er」で。
 お金の記事だけでなく、「家族」や「暮らし」についてもコンテンツ更新中。

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