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中川恵一「がんの話をしよう」

医療・健康・介護のコラム

前立腺がん検診で命を救われるのは1000人のうち1人 治療で50人が勃起障害に

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 生命にかかわらないがんの「過剰診断」が、国レベルで行われた例として、 前回のコラム では、韓国の甲状腺がんを取り上げました。1999年に、乳がん検診のオプションとして甲状腺がん検診が受けられることになると、2012年には甲状腺がんが、女性のがんの約3分の1を占めるまでになったのです。その一方で、この病気による死亡率が下がることはありませんでした。

 実は、日本でも過去に、国家レベルで過剰診断が行われたことがあります。小児がんの一種である「神経芽細胞腫」(神経のもとになる神経堤細胞が悪性化したもの)の集団検診です。

神経芽細胞腫に見る「過剰診断」

前立腺がん検診で命を救われるのは1000人のうち1人 治療で30~40人が勃起障害や排尿障害に

 神経芽細胞腫は、1歳未満で発見されるとほとんどが治るのに対して、1歳以降では死亡率がぐっと高まります。そこで、1984年から生後6か月の乳児全員の尿を検査し、この病気を早期に発見する国レベルの検診が始まりました。2003年度まで、毎年、国が3億円、都道府県が6億円の経費を負担し、累計3000人近くに神経芽細胞腫が発見されました。

 検診を行ったことで、この病気の発見率は2倍近くになりました。しかし、死亡率の減少は確認されませんでした。手術や抗がん剤の副作用で亡くなるケースがあった一方、検診で見つかったがんが自然退縮した例も多数見られました。なお、甲状腺がんでも、自然な退縮や消滅はさほど珍しくありません。

 そして、ついに03年に厚生労働省がまとめた報告書を受けて、全国で行われてきた神経芽細胞腫の集団検診は中止されることになったのです。

前立腺がんの5年生存率は98.8%

 実は、もう一つ、過剰診断が問題となっているがんがあります。高齢男性に多い前立腺がんです。

 19年12月の国立がん研究センターの発表では、がん全体の5年生存率は66.4%で、臓器別に見ると、前立腺がんは98.8%と最も高くなっています。早期のステージ1から手術が難しいステージ3まで、いずれの5年生存率も100%です。

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中川 恵一(なかがわ・けいいち)

 東京大学医学部附属病院放射線科准教授、放射線治療部門長。
 1985年、東京大学医学部医学科卒業後、同学部放射線医学教室入局。スイスPaul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、社会保険中央総合病院(当時)放射線科、東京大学医学部放射線医学教室助手、専任講師を経て、現職。2003~14年、同医学部附属病院緩和ケア診療部長を兼任。患者・一般向けの啓発活動も行い、福島第一原発の事故後は、飯舘村など福島支援も行っている。

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