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山崎まゆみの「心もとろける癒やしの温泉」

医療・健康・介護のコラム

街ぐるみで安心安全に配慮。こんな時代だからこそ、城崎温泉で外湯めぐりを

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 私が今、旅先を選ぶとしたら、コロナ対策が万全で安心安全な温泉地を選びたい。それぞれの温泉地や旅館も独自で工夫していますが、宿だけ、お土産物屋だけ、駅だけ、電車だけと、バラバラなのも不安です。

 その点、地域全体で取り組む兵庫県城崎温泉は頼もしいのです。

 城崎温泉がある豊岡市は、市民とお客さんの安心安全のために、独自の認証制度「CLEAN and SAFE TOYOOKA(クリーンアンドセーフ豊岡)」を掲げているのです。

街ぐるみで安心安全に配慮。こんな時代だからこそ、城崎温泉で外湯めぐりを

安全に配慮された温泉地。安心して外湯めぐりを楽します

街全体で安全対策。浴衣に似合うマスクも作って

 「城崎温泉がまち全体で安心安全なおもてなしを提供し、地域にとっても安心・安全であるように、観光協会、旅館協同組合とともに、新型コロナウイルス感染症対策ガイドラインを作成しました。旅館や飲食店など城崎温泉街全体で共有し、お客様を受け入れてまいります」と宣言したのが6月1日です。全国に先駆けた取り組みだったのです。

 それに合わせて、城崎温泉は浴衣に似合うマスクも作りました。

 城崎温泉でいちばん心うきうきするのは七つの外湯めぐり。歌舞伎座を思わせる建物が特徴的な「一の湯」、玄武洞をイメージした六角窓の「地蔵湯」など、どれも特徴的。駅前の「さとの湯」には、古き良き昭和のタイル張りの浴場があります。透明感ある城崎のお湯に、時を経て (つや) を増したタイルが実によく似合います。

街ぐるみで安心安全に配慮。こんな時代だからこそ、城崎温泉で外湯めぐりを

「一の湯」は歌舞伎座を思わせる重要な建物です

 外湯も入場制限をしてはいますが、きのさき温泉観光協会のホームページを見れば混雑状況はリアルタイムで確認できます。

 このエリアの温泉は、集中管理されているため、お湯はどこに入っても似た印象を受けますが、露天か内風呂か、タイルか木製か岩風呂かで違った楽しみ方ができるのです。ちなみに岩やタイルにはお湯を冷やし、木には保温の効果があります。

 なお、外湯の一つ「御所の湯」は、しばらく休館していましたが、庭園露天風呂が新しくできて、11月2日(月)にリニューアルオープンの予定です。

歴史や文芸の香りも漂う温泉地

 ここで、効果的に外湯めぐりをするときに、私なりのコツが一つあります。洋服の着脱を速やかに済ませるため、いつもワンピースを着用します。そして、手ぬぐいを首にかけ、次から次へとリズムよく外湯を巡っていきます。入浴は、ほんの5分くらいで次から次へと。
 城崎温泉では、いつもこうしてテンポよく外湯七つめぐりを楽しみます。

 ここには、様々な歴史の残り香も漂っています。
 街を一つの旅館と見立て浴衣と 下駄(げた) でそぞろ歩きできる街づくりは、1925年(大正14年)、この地に大きな被害をもたらした北但大震災で壊滅した城崎の街の復興過程で、作られたもの。老舗の西村屋本館展示室には、5・15事件で暗殺された、昭和初期の宰相、犬養毅の書が掲げてあり、堂々たる風格です。

 さらに、この地で忘れてはならないのが、志賀直哉が1917年(大正6年)に発表した私小説「城の崎にて」でしょう。温泉街のはずれに城崎文芸館があり、常設展「白樺派の文豪・志賀直哉の世界」を見ることができます。

 以前は特別展「万城目学と城崎温泉」が催されていました。「鴨川ホルモー」「プリンセス・トヨトミ」など、独特な作風で知られる現代作家、万城目さんの書斎を模した展示などが楽しめました。万城目学さんが小説「城崎裁判」を書き下ろしたご縁からだそうですが、2016年には、やはりベストセラー作家の湊かなえさんも小説「城崎へかえる」を出版し、同じような企画展がありました。

街ぐるみで安心安全に配慮。こんな時代だからこそ、城崎温泉で外湯めぐりを

 もちろん歴史や文芸だけでなく、これからの季節は名物・松葉ガニ、そして通年味わえる但馬牛など、食の魅力もあります。夕食後に外に出てみると、温泉街の中央に立ち並ぶ柳の葉が風にそよいでいました。

 城崎を () ち、電車を乗り継いで京都の宮津まで足を延ばしてもいいでしょう。吉川英治、菊池寛らが訪れ、書や歌が残っている文化財の宿・清輝楼が有名です。天橋立温泉の旅館は部屋にいながらにして天橋立が一望できます。

城崎温泉

きのさき温泉観光協会
【 所在地 】〒669-6101 兵庫県豊岡市城崎町湯島78
【 電 話 】0796-32-3663
【 泉 質 】ナトリウム・カルシウム-塩化物・高温泉
【 効 能 】神経痛、筋肉痛、うちみ、慢性消化器病、痔病、疲労回復など
【アクセス】JR城崎温泉駅下車
【ホームページ】https://kinosaki-spa.gr.jp/

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yamazaki_mayumi_prof

山崎まゆみ(やまざき・まゆみ)

温泉エッセイスト、ノンフィクションライター、VISIT JAPAN大使、跡見学園女子大学兼任講師。世界32か国1000か所以上の温泉を巡り、「温泉での幸せな一期一会」をテーマに各メディアでリポートしている。『続・バリアフリー温泉で家族旅行』(昭文社)等著書多数。最新刊は『行ってみようよ! 親孝行温泉』(昭文社)。内閣官房東京オリンピック競技会・東京パラリンピック競技会推進本部事務局「ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議 街づくり分科会」「ユニバーサルデザイン2020評価会議」に参画し、日本の「バリアフリー温泉」の推進に力を注いでいる。温泉情報はTwitter、FB、インスタグラムで更新中。

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