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多剤耐性でHIV患者の3割が治療に失敗 アフリカ・マラウイの入院患者対象の観察研究

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 アフリカ・マラウイの病院では、入院時に6カ月以上の抗レトロウイルス療法(ART)を受けていたHIV患者の約3割は治療が奏効せず、その8割が2剤以上に耐性を示し、7割が2カ月以内の死亡率が上昇していた。英・London School of Hygiene&Tropical Medicine(LSHTM)のAnkur Gupta-Wright氏らが、1,300例超を対象とした観察研究の結果をLancet HIV( 2020年9月7日オンライン版 )に発表。早期の薬剤耐性検査とその結果に基づく治療変更が早期死亡を抑制する可能性があると指摘している。

薬剤耐性と早期死亡との関連を検討

多剤耐性でHIV患者の3割が治療に失敗 アフリカ・マラウイの入院患者対象の観察研究

(C)Getty Images ※画像はイメージです

 サハラ以南アフリカのHIV陽性率の高い地域ではARTが急速に普及したが、ウイルスのモニタリングが不十分なためにHIV薬剤耐性が増加しており、HIV感染による入院患者が多く、早期死亡率も高い(アフリカ地域で31%)。しかし、2020年7月時点で、ART開始後に入院した患者のHIV薬剤耐性に関するデータはほとんどない。

 そこで、Gupta-Wright氏らは、サハラ以南アフリカでの大規模結核スクリーニング試験 STAMP※ の一環として、HIV流行地域でHIV感染による入院患者の観察研究を実施、ウイルス抑制の失敗とHIV薬剤耐性の頻度、およびこれらが早期死亡率に及ぼす影響を検討した。

 マラウイ・Zomba Central Hospitalに入院した18歳以上のHIV-1感染患者を臨床症状などにかかわらず登録、入院時に6カ月以上ARTを受け血中ウイルス量を測定した患者を解析対象とした。

 ウイルス学的失敗は血中HIV RNA量が1,000コピー/mL以上とし、英国でultra-deep sequencingによる薬剤耐性検査を行った。

 薬剤耐性は米・スタンフォード大学のHIV drug resistanceプログラムにおける中等度または高度耐性と定義。死亡リスクは登録から56日後に評価した。追跡不能例は、死亡時、56日後または最終面会時に打ち切りとした。

2剤以上耐性が早期死亡に関連

 2015年10月~17年9月にマラウイでSTAMP試験に登録されたHIV患者1,316例のうち、入院時に6カ月以上ARTを受けていた786例を解析対象とした。平均年齢は41.5歳(標準偏差11.4歳)、女性528例(67%)。468例(60%)はウイルス量が検出限界未満(<50コピー/mL)、66例(8%)は軽度ウイルス血症(50~999コピー/mL)、252例(32%)はウイルス学的失敗だった(ウイルス量中央値12万5,603コピー/mL)。

 薬剤耐性検査結果が得られた237例のうち、195例(82%)がラミブジン、128例(54%)がテノホビル、219例(92%)がエファビレンツに耐性を示した。237例中18例(8%)のみがARTの第一選択薬に対する耐性が検出されず、127例(54%)が全ての第一選択薬に耐性、196例(83%)が2剤以上に耐性を示した。

 56日目までの死亡率は20%(786例中156例、95%CI 17~23%)で、うち83例(53%)は退院後に死亡した。777例を対象に薬剤耐性で層別化したKaplan-Meier生存曲線を検討したところ、年齢、性、ART期間、結核治療および治療群を調整後、1剤耐性または耐性なし(ウイルス量1,000コピー/mL未満)群に比べて2剤以上耐性群では、56日後までの死亡リスクが70%上昇した(調整ハザード比1.7、95%CI 1.2~2.4、P=0.0042)。

安価で迅速な薬剤耐性検査法が必要

 以上の結果から、Gupta-Wright氏らは「HIV入院患者ではウイルス抑制の失敗とHIV薬剤耐性の頻度が極めて高いことが判明し、薬剤耐性は死亡率上昇と関連していた。ARTを既に開始した進行HIV患者は、入院中にウイルス学的失敗を検査する必要があり、失敗であることが特定されれば、治療変更が有益な可能性がある。ARTを行うクリニックと退院後ケアを対象とした介入も必要。われわれの調査結果は、HIV薬剤耐性を検出するための低コストで迅速なアッセイ開発をサポートしている」と結論している。

 責任著者で英・University of CambridgeのRavindra K.Gupta氏は「薬剤耐性HIVがもたらす脅威が浮き彫りになった。入院患者の治療と介入の決定に役立つ可能性がある薬剤耐性ウイルスの迅速な検査法が求められる」と述べた。

 世界保健機関(WHO)のARTガイドライン2019年版では、初回治療としてインテグラーゼ阻害薬(INSTI)であるドルテグラビル(DTG)ベースのレジメンを推奨しており、マラウイでも同年からこのレジメンを導入したが、Gupta-Wright氏らはその限界を認めている。「今回実施した薬剤耐性検査では68%の患者が核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)3剤以上に耐性を示し、多数の患者が機能的にDTG単剤療法になっていることが示唆される。DTGベースのARTについては、実臨床での結果とHIV多剤耐性の影響はまだ確立されていない」と考察している。(坂田真子)

※ STAMP:the rapid urine-based screening for tuberculosis to reduce AIDS-related mortality in hospitalised patients in Africa

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