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「望まない妊娠」、性被害の相談急増…外出自粛・収入減が影響?

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厚労省研究班 調査へ

 新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛などで「望まない妊娠」や性被害が増えている可能性があるとして、厚生労働省の研究班が、人工妊娠中絶の状況などを調べる初の全国調査を今年度中に行うことがわかった。各地の妊婦向けの相談窓口には4月以降、特に10、20歳代の相談が急増しており、研究班は全国の医療機関や支援団体に協力を求め、感染拡大の前後のデータを比較する。(戸田貴也)

 ■「おこづかい」

 今年4月、神戸市の助産院を拠点とした妊婦向けの相談窓口「小さないのちのドア」に、無料通信アプリ「LINE」でこんな相談が寄せられた。

 「コロナでアルバイトを辞めさせられた。路上で声をかけてきた男性に『おこづかい稼がない』と言われて性行為をして、妊娠したかもしれない」

 窓口を開設したのは2018年9月で、2年間で受けた相談は約1000人に上る。「毎月の相談は30人ペース」だったが、外出自粛を求める緊急事態宣言が全国に出された今年4月の相談は89人に急増。5月が120人、6月が148人、7月が152人と、コロナ前と比べて5倍に増えた。

 中でも10歳代の相談は7割を占めるといい、永原郁子代表理事は「若い世代の収入が減ったことに加え、外出自粛や休校によって屋内で過ごす時間が長くなったという声も目立つ」と相談急増の背景を分析する。

 東京都の窓口「妊娠相談ほっとライン」でも、今年4月の相談は365件で、前年同月比で約2割の増加。このうち20~30歳代は224件から300件に増えた。

 国連人口基金は4月、ウイルス感染への恐れや外出制限により、女性が医療機関に行かないことが予期せぬ妊娠につながると指摘した。緊急避妊薬(アフターピル)の処方や診察の遅れにつながるためで、全国の相談窓口の運営者らでつくる一般社団法人「全国妊娠SOSネットワーク」(全妊ネット、東京)の赤尾さく美理事は「もともと貧困や孤立状態にあった女性がコロナ禍でさらに追い込まれているおそれがある。ちゅうちょせずに窓口などに相談してほしい」と呼びかける。

 ■専門医が協力

 人工妊娠中絶の手術は、母体保護法により、都道府県医師会が審査した「指定医師」と呼ばれる専門医(全国に約7200人)が本人と配偶者の同意を得て行うよう定められている。

 厚労省は年1回、全国の手術件数を公表しているが、都道府県からの報告をもとに集計するため時間がかかり、最新データは2018年度の16万1741件。このうち「望まない妊娠」と思われるケースがどれくらいあるかは調査していない。

 研究班は、専門医の全国組織「日本産婦人科医会」の協力を得て医師らに直接アンケートを行い、休業要請などによる収入減や解雇を理由とした事例があったか、避妊をしたかどうかなどを調べる。そのうえで昨年の同じ時期と比較し、変化があったかどうかを今年度内に分析する。

 さらに研究班は、自治体や民間が設置する相談窓口や、性犯罪の被害者を支援する各都道府県の「ワンストップ支援センター」にも協力を呼びかけ、相談の件数や内容を分析して年齢別の傾向などを探る方針だ。

 研究班代表で、日本産婦人科医会の安達知子常務理事は「コロナの感染拡大前から若い年代ほど中絶を選ぶ割合が高い傾向にあり、性教育の不十分さが課題だった。コロナで自粛が進んだことによる女性や妊婦の状況の変化を分析し、『予期せぬ妊娠』を減らす取り組みに生かしたい」と話している。

 全国の相談窓口は、全妊ネットのホームページ(https://zenninnet-sos.org/)に掲載。各都道府県の保健所、助産師会、大学病院などが「女性健康支援センター」として対面、電話、メールなどで相談を受け付けている。

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