文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

外国人の診療に「やさしい日本語」を 動画教材を公開

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

新型コロナウイルスの診療でも

『医療で用いる「やさしい日本語」』から

『医療で用いる「やさしい日本語」』から

 「やさしい日本語」を、外国人を診療する際に活用してもらおうという『医療で用いる「やさしい日本語」』の動画教材が完成し公開された。武田裕子・順天堂大学教授(医学教育学)を事業代表者に、順天堂大、帝京大、聖心女子大の3大学による「東京都と大学との共同事業」の一環。

https://easy-japanese.info/archives/391

 外国人を診察する際の言語は、まず英語だと思われがちだが、実は日本に住む外国人の8割は日常会話で日本語を使えるとの調査もあり、「やさしい日本語」を用いることが有用だという。新型コロナウイルス感染症の診療においても、導入が取り組まれている。

/article/20200511-OYTET50018/?catname=column_marugoto-iryo

 一文を短く 「お」をつけない

 「やさしい日本語」は、日本語に不慣れな外国人にも分かりやすいように、難しい用語や言い回しなどを言い換えたもので、阪神・淡路大震災をきっかけに普及した。「尊敬語や謙譲語、オノマトペ、外来語は避ける」「話し出す前に整理」「一文を短く」「『お』をつけない」「実物を示す」「自分がやってみせる」などがコツだという。

 動画教材は、大きく三つの柱で構成されている。まず、「やさしい日本語」の基礎知識や言い換えのコツについて、日本語教育学の専門家である岩田一成・聖心女子大学教授が解説した。やさしい日本語への言い換えのイメージとして、「飲酒の習慣はありますか?」→「毎日、お酒を飲みますか?」などの例を挙げるなどして説明している。

医療機関での場面ごとに

 動画教材の二つ目の柱は、医療機関での場面ごとに、実例を挙げて説明した。受付編(総合案内)、医療相談編、検査部編、放射線部編、病棟編、会計編、外来編(受付・医師の診察・処方薬の説明)の七つの場面で想定される言い換え例を、それぞれ数分間の動画で解説している。

 たとえば、「病棟編」の中での看護師と外国人患者のやりとりでは、

 「頭が痛みますか。どんな痛みですか? ズキズキしますか、ガンガンですか?」(一般的な日本語)

 ↓

 「頭ですか。どんな痛みですか? 強いですか? 弱いですか?」(やさしい日本語)

 への言い換え例などが示されている。

 順天堂医院の協力で、石川ひろの・帝京大学教授がヘルスコミュニケーションの観点から監修した。医師や看護師だけでなく、医療機関に従事する様々な職種の人が活用できる事例が盛り込まれている。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

tamura-yoshihiko_profile

田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

田村専門委員の「まるごと医療」の一覧を見る

1件 のコメント

コメントを書く

意思を通じさせる言葉と科学とアイデア

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

やさしい日本語とは何でしょうか? 日本人相手であれば、丁寧語や敬語、相手のプライバシーに配慮した表現でしょう。 しかし、ここでは日本語が上手でな...

やさしい日本語とは何でしょうか?
日本人相手であれば、丁寧語や敬語、相手のプライバシーに配慮した表現でしょう。
しかし、ここでは日本語が上手でない人にもある程度通じて、サービスが提供されることを指します。
相手理解度や表現のつたなさに伴う表現や発言を許容し、表情や態度、単語や熟語を使って複数の角度から確認する事が大事です。
子供相手の簡単な日本語とはまた違うやさしい言葉や感覚の幅や意味が存在します。
これは医療だけではなく、外国人相手の旅行や飲み会でも大事ですね。
お互いの気遣いが、かえって、誤解を生じさせることもあります。

救急では言葉の通じなくなった重症の日本人相手にパンスキャン(全身撮像)が推奨されています。
一刻一秒を争う状況であればそうですが、その前に、言葉で確認を取りたいものです。
それが安心や信頼関係を生みます。
放射線科医や各科医などの診断医も、一応、画像全体を確認しますが、やはり、フォーカスが絞られていると正診率は高くなります。
必ず、症状のある当該臓器や構造物か、関連の強い所に異常が発見されることが多いからです。
また、自分の発言と結論の関係性がわかれば、患者サイドも安心しやすいと思います。

実は放射線科診断医やサッカー選手の仕事も似ています。
言葉が100%通じなくても、名手の仕事は似てくるもので、診断名やパスコースは似てきます。
少なくとも的外れにはなりません。
そうなれば、あそこ、ここ、虫垂炎、進行胃がん、程度の内容をキーワードで翻訳すれば通じ合えます。

サービスとは何か、コミュニケーションとは何か、を背景の文化や理解度の違う相手とどれだけ共有できるかの話で、一番大事なのは案外国語力(常識や科学を応用する力)だと思います。
英作文も和文和訳が大事ですからね。
おそらく、翻訳ソフトも含めて、多様性のある未来に進むのではないかと思います。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事