リングドクター・富家孝の「死を想え」
医療・健康・介護のコラム
「迷惑をかけたくない」という日本人の死に方……藤木孝さん80歳の自殺に思う
今年はなぜか有名人の自殺が続きます。女子プロレスラーの木村花さん(22)、俳優の三浦春馬さん(30)や芦名星さん(36)に続いて竹内結子さん(40)。先日は、やはり俳優の藤木孝さん(80)の自殺が報じられました。ただし、藤木さんの自殺は、80歳という高齢のため、若い人の自殺とはまったく違うことを、私は考えさせられました。それはなぜ、死期が近いのに、わざわざ死のうとするのかということです。
高齢になって自死を選ぶ理由
当初の報道によると、藤木さんの自殺は息子さんに発見され、遺書も見つかりました。そこには、「役者として続けていく自信がない」ということが書かれていたとされ、コロナ禍で家にいることも多く、仕事もなかったと伝えられました。しかし、その後の報道によると、藤木さんは、東京・中野区の住宅街の8畳と6畳二間にキッチンがある2Kのアパートで一人暮らしをしており、ときどき、息子さんが見に行っていたようです。仕事がないわけではなく、テレビのクイズ番組に出演し、来年上演予定のミュージカルへの出演も決まっていたそうです。
とすると、これは自殺といっても「自裁死」だったのではないでしょうか。
自裁死という西部邁氏の死に方
「自裁死」というのは、自らの意思で死んでいくことを指します。2018年1月に入水を図った評論家の西部邁氏(享年78)の死について、使われた言葉です。自ら裁いて死ぬから、自裁死というわけです。
西部氏の場合、日頃から死ぬときは自分の意思で死ぬと周囲に告げ、当日は信奉者2人に手伝いを頼みました。そのため、2人は自殺 幇助 の罪に問われ、世間に大きな波紋を呼びました。西部氏の遺書には、「家族に介護などで面倒をかけたくない」とあったと伝えられました。
実際、西部氏は遺稿となった『保守の遺言』(平凡社新書)のなかで、こう述べていました。
「極端な例を挙げれば、オツムが 痴呆 状態に入ったままで、あるいは 糞尿 垂れ流しのままで死期に近づいている自分の姿について、『今 此処 』の心身が健全(といってよい)状態にあっても、何ほどかの予測・予想・想像をもってしまう。」
この先自分がどうなるか、想像がつくというわけです。そこで、「極端な場合、そんな種類の死が間近に待っていると強く展望されるなら、今のうちに自裁してしまおうと決断し、そのための準備をし、そしてその決意を実行する、ということになって何の不思議もない。」と続きます。
西部氏の決断は揺るぎないものでしたが、持病が悪化して、すでに手足が不自由だったため、信奉者の助けを借りざるをえませんでした。周囲の話では、一にも二にも人に迷惑をかけず、死んでいきたいと望んでいたといいます。
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自殺は罪でしょうか
きんたろう
鬱病で苦しむ人、経済的な問題に悩んでいる人、高齢でも大学病院のベッドで治療を家族に受けさせられている人を見てきましたが、自殺を殺人でもするような...
鬱病で苦しむ人、経済的な問題に悩んでいる人、高齢でも大学病院のベッドで治療を家族に受けさせられている人を見てきましたが、自殺を殺人でもするような意味で制止しようとする人の想像力の欠如に悲しくなります。人様に迷惑をかけたくないと、高齢者でなくても障害者だったり難病患者だったりすれば思います。安楽死を認めていない日本は人権についての後進国だと思います。わたしは慢性的な痛みに苦しんでいて、死ぬまで治らないと医師から宣告されています。自殺をして家族の迷惑になることもあるので、ぜひ安楽死を認めてほしいと思います。生まれる時は自分で選ぶことができませんが、今までの人生を振り返って感謝しながら死んでいく自由もあってよいと私は思います。
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