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ココロブルーに効く話 小山文彦

医療・健康・介護のコラム

【Track5】繰り返す過呼吸発作の背景にあったものとは―社会的タブーの告白が治療の転機に―

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シングルマザーを襲った過呼吸発作

【Track5】繰り返す過呼吸発作の背景にあったものとは―社会的タブーの告白が治療の転機に―

 ユミコさん(37)は、数年前に離婚し、幼稚園に通う長男と2人暮らし。デパートに勤務するシングルマザーです。お客さんにも職場の同僚にも愛想がよく、礼節正しい接客ぶりが評判でした。

 ある年の12月下旬、仕事が忙しくて疲労が重なったのか、帰宅後に突然の息苦しさと 動悸(どうき) に見舞われました。 咄嗟(とっさ) のことで、どうしたらいいのか迷いましたが、近くの内科医院を時間外に受診しました。過呼吸発作との診断で、抗不安薬の処方を受け、服用すると落ち着き、その晩はぐっすりと眠りました。

 しかし、その後も唐突に手のしびれ感や息苦しさを覚えて、仕事を休みがちとなり、1月上旬に総合病院の心療内科を受診しました。薬剤による外来治療が始まりましたが、過呼吸発作や両手のしびれは完全にはなくなりませんでした。

 次第に、気分は落ち込み、何事にも気力がわかなくなってしまったため、医師の勧めもあって、しばらく休職することとなりました。

笑顔の裏側に隠されたこと

 心療内科の担当医から、当時、私が勤務していた病院に紹介があり、休職期間には長男を自分の実家に預け、入院治療を行うことになりました。

 入院後、薬を変更したり、量を調整したりしたことで、ユミコさんの気分は安定し、表情も明るくなっていきました。ただ、私から見れば、逆に明るすぎる様子が気にかかっていました。問診の際に気分について尋ねても、「今は大丈夫です」と、これ以上ないような笑顔で答えるのがほとんどでした。

 入院後2週間が過ぎ、過呼吸の発作も出なかったため、週末に実家への外泊を試みました。ところが外泊2日目の夕刻に、ユミコさんは意識不明に陥り、病院に救急搬送されてきたのです。

 身体面の救急処置を施しつつ経過を見たところ、手指のけいれんや突発的な過呼吸が数回見られた後に、ようやく意識がはっきりと戻ってきました。

 「……ごめんなさい」

 小声で、そう繰り返す様子は、それまで過剰なまでに明るく振る舞っていた彼女とは別人のようでした。

 症状が落ち着き、問診が可能な状態になったため、診察室に移動しました。冷静に丸椅子に座ったユミコさんは、「もう大丈夫です」と言い、意外なことを切り出しました。

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小山 文彦(こやま・ふみひこ)

 東邦大学医療センター産業精神保健職場復帰支援センター長・教授。広島県出身。1991年、徳島大医学部卒。岡山大病院、独立行政法人労働者健康安全機構などを経て、2016年から現職。著書に「ココロブルーと脳ブルー 知っておきたい科学としてのメンタルヘルス」「精神科医の話の聴き方10のセオリー」などがある。19年にはシンガーソング・ライターとしてアルバム「Young At Heart!」を発表した。

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1件 のコメント

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性のタブー

おしどり

[不倫は決して許される関係ではありません。] とあります。私は、父の海外赴任の為、欧州で育ちました。北欧では、不倫は法律的にも倫理的にも悪ではあ...

[不倫は決して許される関係ではありません。]

とあります。私は、父の海外赴任の為、欧州で育ちました。北欧では、不倫は法律的にも倫理的にも悪ではありません、勿論、感情とかモラルとかはあるのですが、それは個人的に決めることです。離婚も、どちらが悪い、とかいうのは関係ないし、不倫の慰謝料なども勿論ありません。なので、結婚していても、オープンに他の人と性関係を持つ人もいます(それについて話し合って、双方それでいい、と合意すれば問題ない、ということです。隠れて、というのはいけない)。

日本ですから、郷に入れば郷に従え、で、ユミコさんが罪悪感を持ったことは分かりますし(相手の男性の妻にしてみれば、勿論、悪者ですものね)、医師としてはそういう相談になるのも分かります。

ただ、こういうタブーは本当に良いのか、は、議論してもいいと思うのです。

私は、性犯罪に巻き込まれたことがあるのですが、それを言えなかった。というのは、犯人の男性は結婚していて、妻もいる。私は、妻である女性と見識もある。なので、暴力で侵されたとはいえ、自分が不倫の悪者になった感じがしたのです、なんで、止められなかったのか、と。そして、止められなかった自分が悪い、と感じたので、性犯罪だと言えなかった。

タブーというのは、難しいと思います。

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