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佐藤純の「病は天気から」

医療・健康・介護のコラム

片頭痛、関節リウマチ…天候悪化による痛みは推定1000万人に!? 異常気象で誰にもリスク

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「3日前の気圧低下が影響」という報告も

 ところが、これまでに行われた調査研究では、関節リウマチひとつを取ってみても、気温、湿度、気圧の変化と痛みの悪化には「関係あり」とする報告もあれば、「関係はあるが確定的でない」「関係なし」とする報告もあります。一方、臨床の現場では、「痛みが天気の影響を受ける」と感じている関節リウマチ患者は、もっと多い印象があり、アメリカの4都市で調査を行ったジェイミソンらは、「60%以上」と報告しています。

 この 乖離(かいり) は、どうして起こってしまうのでしょうか。原因として、心理的な問題の影響を考えなければなりません。最近は、天気予報が多く配信されているため、実際はそうではないのに、「自分の痛みは、天気の影響を受けている」と思い込んでしまっている人がいる可能性は否定できません。しかし、反対に、天気の影響は実際にあるのに、痛み方にばらつきがあったり、気温、気圧、湿度などの変化が相互に影響し合ったりするため、天気と痛みとの関係がうまく検出できていなかった可能性もあります。

 また、気象の変化が痛みに影響を及ぼす際、タイムラグがあることも考慮しないといけません。このタイムラグについては、京都大学のグループが、関節リウマチ患者の関節の腫れと痛みの強さと、気圧との相関性について調べたところ、調査した日の「3日前の気圧低下が大きく影響していた」と報告しています。だとすれば、痛みが強くなった日の気圧を測定しても、症状との関係性はうまく検出できないことになります。

 このようなことから、「痛みと気象の関係を調べる」という目的に調査研究法を用いるのは、限界があると考えられます。私は、この問題を解決するために、両者の因果関係を明らかにするための「実験」を行うことが必要と考え、長年、研究を続けてきました。その内容について、次回からお話ししたいと思います。(佐藤純 愛知医科大学学際的痛みセンター客員教授)

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佐藤 純(さとう・じゅん)

 愛知医科大学医学部学際的痛みセンター客員教授。中部大学教授。
 1958年、福岡県久留米市生まれ。東海大学医学部卒業後、名古屋大学大学院医学系研究科で疼痛とうつう生理学、環境生理学を学ぶ。同大学教授を経て、現職。2005年より、愛知医科大学病院痛みセンターにて、日本初の気象病外来・天気痛外来を開設。

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