大人の健康を考える「大人び」
医療・健康・介護のコラム
脚の痛み(2)外出控え筋肉減 意識的に運動
このシリーズでは、関節外科が専門で関西労災病院(兵庫県尼崎市)副院長の津田隆之さんに聞きます。(聞き手・長尾尚実)
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新型コロナウイルスの影響で外出を控えたため、「少し太り、歩くのがきつい」「持久力が落ちて長く歩けない」という話を高齢の患者さんから聞きます。年をとるほど脚の筋肉量の維持が大切です。75歳以上の後期高齢者は一定の運動を続けていないと約1週間で脚が弱り、いざ動こうとしても5分ほどで限界が来てしまいます。
若い時に関節痛がなかった人も加齢によって軟骨がすり減り、膝の関節や股関節が変形して痛みが起きることがあります。膝関節の変形による「変形性膝関節症」は高齢の女性の半数に表れます。長い距離を歩くと痛みが出て、安静にすると痛みはなくなります。
膝の関節や股関節に痛みがある人は、歩かなければ一時的に痛みはなくなります。しかし、その間に脚の筋肉量は減っていき、歩こうとすると再び痛みが出ます。
外出が嫌になって家に長期間籠もると、個人差はありますが、壁などで体を支えながらの「伝い歩き」しかできないほどまで身体機能が落ちることがあります。介護施設の利用が必要な人とほぼ同じレベルで、転倒の危険も当然あります。かなりリハビリを頑張らないと元に戻りません。
外出を控える間に減った脚の筋力は、意識して運動しないと回復しません。関節に痛みを抱える人ほど大変ですが、痛みと向き合いながら取り組む必要があります。患者さんには、感染防止に気をつけつつ人の少ない朝晩に散歩するよう指導しています。歩いて痛みが出たら休み、一晩で痛みが消えていく程度の運動が理想です。
【略歴】
津田 隆之(つだ・たかゆき)
三重県多気町出身。1982年、大阪大医学部卒、90年、同大学院修了。星ヶ丘厚生年金病院(現・JCHO星ヶ丘医療センター)整形外科部長、箕面市立病院医務局次長などを経て、2017年4月から現職。専門は関節外科、骨粗しょう症の疫学。市民向け講演会などで、脚の痛みを起こす病気や治療法、転倒予防について解説している。
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