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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

がんを治すために食事療法を勧められました 食事内容を変えた方がよいのでしょうか?

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無理して食べなくてもいい

 どんなときにも食事をとらなければいけないと思い込んでいる患者さんもおられますが、体調が優れず、食欲がないときは、無理して食べなくてもいい、ということもお伝えしています。「食べたくないのに食べなければいけない」というのもまた、つらいものです。食べたいときに、食べたいものを、食べられるだけ食べればいい、というのが私のアドバイスです。

 「これがいい」「あれはダメ」「食べなきゃダメ」「食べない方がいい」といった情報に惑わされることなく、「何を食べたいのか」という心の声を聞きながら、自然に食事をするのがよいのではないかと思います。

科学的根拠がほとんどない食事療法

 何がよくて何がダメなのか、情報源によって、違うことが書いてあったりもして、食事療法にもいろいろな流派があるようなのですが、共通しているのは、科学的な根拠がほとんど示されていないということです。「免疫力が高まる」とか、「がんのエサになる」というような説明がされていることもありますが、「免疫力」「エサになる」というのが具体的に何を指しているのかは、よくわからないことが多く、これらのキーワードは、科学的にではなく、イメージとして使われているような印象です。

 その食事療法をした場合としなかった場合とを比較した臨床試験によって、食事療法の有効性が示されていれば、「科学的」と言えるのですが、食事療法の有効性の根拠として紹介されているのは、多くの場合、患者さんの経過報告や体験談で、その信ぴょう性も、あまり高くありません。

「食事療法が効いた例」のカラクリ

 以前、食事療法で有名な医師からお電話をいただいたことがありました。私の患者さんのCT検査の画像を提供してほしいというのです。よく聞いてみると、この患者さんは、その医師のもとで食事療法を受けていて、それがよく効いた症例として書籍で紹介したいということでした。でも、この患者さんは、同じ時期に、標準的な抗がん剤治療を受けていて、それによって、がんが小さくなっていたのでした。食事療法がいい影響を与えた可能性もあるのかもしれませんが、抗がん剤治療を受けていたことに触れずに「食事療法がよく効いた実例」として取り上げるのは不適切です。ご依頼は丁重にお断りしましたが、その医師の著書に出てくる「食事療法がよく効いた実例」のカラクリがわかった気がしました。

 食事に関するご質問は多くいただいているので、次回もこのテーマについて考えてみたいと思いますが、とにかく、私が一番お伝えしたいのは、「食事はおいしくいただきましょう!」ということです。

 自然に楽しく食事ができれば、それは人生の彩りを豊かにしてくれるでしょうし、生活の質もよくなるはずです。そして、「免疫力」というものがあるのなら、それもきっと高まるのだと思います。(高野利実 がん研有明病院乳腺内科部長)

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大付属病院で研修後、2000年より東京共済病院呼吸器科医員、02年より国立がんセンター中央病院内科レジデントとして経験を積んだ。05年に東京共済病院に戻り、「腫瘍内科」を開設。08年、帝京大学医学部付属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に最年少部長として赴任し、「日本一の腫瘍内科」を目標に掲げた。10年間の虎の門時代は、様々ながんの薬物療法と緩和ケアを行い、幅広く臨床研究に取り組むとともに、多くの若手腫瘍内科医を育成した。20年には、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、かつてのヨミドクターの連載「がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~」をまとめた、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)がある。

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