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不妊治療で6回転院のケースも! 施設の情報開示を 保険適用に期待高まる
自民党の総裁選が終わり、官房長官だった菅義偉氏が選ばれました。菅新総裁は、総裁選の立会演説会で少子化対策を政策の一つに掲げ、「出産を希望する世帯を広く支援するため、不妊治療への保険適用を実現したい」と話されました。
これは大きな話題となり、SNSでは当事者の期待の声が高まりました。方針としては、子どもを望む人の負担を軽減するために、保険の適用範囲を広げるとのこと。果たして、それがどのように実現されていくのか、私が代表を務める不妊当事者の自助団体NPO法人Fineとしても、しっかりと拝見したいと思っています。
20年近く進まぬ法整備
その政策の中に、ぜひとも入れていただきたいこととして、不妊治療に対する法整備があります。不妊治療に関わる法律は日本には一切なく、そのために非常に危うい状況が続いています。
先日もニュースで「当事者間による任意の精子提供」によるトラブルが報道されていました。生命の誕生に関わる大切な事柄において何の法律もないことは、生まれてくる子どもにとって大きな不利益になりかねません。この法整備については20年近く前から取りざたされており、何度か検討会が開かれて進められたこともあります。しかし、そのたびに残念ながら立ち消えてしまい、いまだに形になっていません。長年この課題に取り組んでこられた野田聖子衆議院議員によると、近年、またこの取り組みに注力されていて、あともう一歩というところまで来ているそうです。不妊治療に対する経済的負担軽減が政策として進められる可能性のある今、同時に法整備も進めることは、喫緊の課題と言えるでしょう。
不妊治療施設の情報開示を
さらに関連して、このタイミングでぜひ進めていただきたいのは、不妊治療施設に対する公的なガイドライン作成と、わかりやすい情報開示の徹底です。この春から夏にかけてFineが実施した「どうする?教えて!病院選びのポイントアンケート2020」 では、病院選びに「困った」と答えた患者が約8割もいて、患者の7割が2回以上の転院を繰り返しているという結果が明らかになりました。
どのような疾患であれ、病院選びはそれなりに苦労がつきものであるとは思いますが、不妊治療の場合は特に、女性の年齢が妊娠・出産に大きな影響を持つため、できるだけ早く自分に合った病院に行くことが重要です。さらに自費診療で高額な治療費は、1回の体外受精で50万円以上かかった人が43%というデータもあります。(NPO法人Fine「不妊治療と経済的負担に関するアンケート 2018」)
1回の体外受精による出産率は平均すると約12%程度とされており、1度の治療で出産できなかった患者は、その治療を繰り返し、治療費がかさんできてしまいます。経済的理由で治療を続けられなくなり、子どもを持つことをあきらめてしまう夫婦も数多くいるのです。
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