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新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

医療・健康・介護のコラム

ナルコレプシーという病気を知ってほしい 患者会で情報発信

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 ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)

駒沢典子(こまざわ・のりこ)さん

【今月のゲスト】
駒沢典子(こまざわ・のりこ)さん

1970年生まれ。小学生の頃から過眠症に悩み、高校生の時にナルコレプシーと診断される。周囲にはずっと病気を隠してきたが、いまだに悩んでいる人が多いことを知り、2018年からNPO法人日本ナルコレプシー協会(通称なるこ会)の事務局長として活動を始める。SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる「誰一人取り残さない世界の実現」を、まず自分の身近なところからできたらなと思っている。夫と犬の「3人」暮らし。

ナルコレプシーの駒沢典子さん(下)

研究者とのコラボも(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構で、前から3列目左端が駒沢さん)

研究者とのコラボも(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構で、前から3列目左端が駒沢さん)※画像は一部修正しています。

 ランチタイムを終えて、のんびりしているカフェ。オーナーの私は、先ほどからカウンター席に座っている駒沢典子さんの話を伺っている。彼女は、突然強い睡魔に襲われるなどの症状があるナルコレプシーという病気を持っている。

 「薬を飲めば、眠気はある程度コントロールできるということでしたが、日々の生活では、どういう工夫をしながら過ごされているんですか?」

 「薬には限界があるし、私の体にも限界がある。そう考えて過ごすことかしら。前向きに諦めるっていう感じです」

無理せず 「前向きに諦める」

 「前向きに諦めるって?」

 疲れやすい体と付き合うためには、無理はしない。彼女はそう表現した。悔しいと思ってしまうと心がつらくなる。それを、「まぁ、しょうがないか」という感じで諦めるという。

 カフェを経営している私にも必要な考え方だ。新型コロナウイルス対策をいろいろと行い、それでも客も売り上げも激減していく中、前向きに諦めるという発想はすてきだ。頑張りすぎず、今の自分にできることをしっかりと見据えている。

 彼女は自分の病気のことを話しているのだが、私にとっては人生について深く感じるところもあり、ありがたい。

「なるこ会」の事務局長として

 「同じ病気の人たちが集まると……」

 ナルコレプシーには患者会がある。NPO法人日本ナルコレプシー協会(通称なるこ会)という。駒沢さんは、この会の副理事長であり、事務局長を務めている。

 「昔は、この病気をいかにして周りの人に気付かれないようにするかという話が多かったです。でも、最近は、もっとわかってもらえるにはどうしたらいいかというふうに、患者の考え方が変わってきたように感じています」

 会は設立してすでに50年ほどたつというが、役員も少しずつ若い方が増えているという。社会の変化に合わせて、会の方針や会員の発想も変化しているのだろう。患者会は、どこも後継者不足や柔軟な活動が難しいなどの悩みを抱えているが、なるこ会は積極的に活動を広げている貴重な存在のようだ。

 「会ではSNSなども取り入れて、インターネットで情報交換や会議をしています」

 どんな活動をしているのか聞いてみた。

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鈴木信行(すずき・のぶゆき)

患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。


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