新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
医療・健康・介護のコラム
突然の強烈な眠気や脱力に襲われ
ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)
【今月のゲスト】
駒沢典子(こまざわ・のりこ)さん
1970年生まれ。小学生の頃から過眠症に悩み、高校生の時にナルコレプシーと診断される。周囲にはずっと病気を隠してきたが、いまだに悩んでいる人が多いことを知り、2018年からNPO法人日本ナルコレプシー協会(通称なるこ会)の事務局長として活動を始める。SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる「誰一人取り残さない世界の実現」を、まず自分の身近なところからできたらなと思っている。夫と犬の「3人」暮らし。
ナルコレプシーの駒沢典子さん(上)
空気を入れ替えるためにカフェの扉を大きく開けた。店内に満ちていたコーヒーの香りに代わって、入ってきた風が肌にひんやりと当たり、秋を感じる。風とともに、女性も入店してきた。
「空気を入れ替えているのですが、ちょっと寒いですか?」
オーナーである私は、カウンターに座った私と同い年ぐらいの彼女に尋ねた。
「目が覚めるような空気になって、ありがたいです!」
笑顔あふれる明るい雰囲気を持った女性だ。返事もはきはきとしていて、聡明(そうめい)なイメージを感じる。でも、「目が覚めるような」って?
「過眠症」のひとつ 脳に原因
「実は、私……、『過眠症』でして……」
先ほどの返事にちょっと怪訝(けげん)そうな顔をした私の表情を読み取って、彼女が説明してくれた。名前は、駒沢典子さんという。
「ナルコレプシーって聞いたことがありますか?」と、駒沢さん。
「申し訳ありません。初めて聞きます。それは、病名?」と、私。
昼間の眠気が強く、起きていられない状態を過眠という。過眠を引き起こす病気には、睡眠中の身体症状が原因となる「睡眠時無呼吸症候群」などいくつかあるが、ナルコレプシーは脳の中の睡眠を調節する仕組みがうまく働かないのが原因の病気だそうだ。
「日中でも突然に強い眠気に襲われてしまうだけでなく、顔などの筋肉の力がスッと抜けてしまう症状が出るのも特徴です」
不思議な病気もあるものだ。私も、いつも寝不足で、お客さんがいなくなったカフェで、うたた寝をすることはある。でも、どうやら、そういうのとは違って、突然に、それも激しい眠気らしい。
1 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。