ピック病(認知症)介護『父と私の事件簿』
医療・健康・介護のコラム
真夏のベッドに毛布と電気あんかを持ち込んで…父は熱中症まっしぐら 汗だらだら父娘バトルの顛末
今度は猛暑に窓を開けっぱなしで
「熱中症になるから、あんかは捨てた」と父には宣言したのだが、父はそれを信じていなかったのか、忘れたのか、私がいない間に戸棚や押し入れのすべてを捜し回ったようだ。「あんかを捜し回ったでしょ。もう捨てたからね」と言ったものの、父は納得せず、その後何度も私の留守中、探し回っているようだ。ピック病の自分のルールにこだわる症状に関係あるのかはわからないが、すごい執念。本当に処分してよかった。隠すだけだったら、私の留守中に絶対見つけて、使っていただろう。
対策はとったものの、8月の気が狂うような暑さの中、油断はできないので、1日に1度か2度、父の部屋のドアを開けていたが、ある日、ものすごく部屋の空気が暑い時があった。「エアコンのスイッチは私が持っているのに、どういうこと?」と思ったら、敵は窓を開けているのだった。コロナ対策のワイドショーを見て、「テレビで、換気が必要と言っている」と言いはるが、父は窓を開けっ放しにしたまま、例によって、大汗をだらだらかいているのだ。「あ~もう!」。むだとは知りつつ、窓を開けても、すぐ閉めるように言った。
窓を開けたままにするという新手のせいで、1日に何度も、父の部屋のドアを開けて確認しないといけなくなり、この夏は大層面倒くさかった。しかし、熱中症になられるほうが、何百倍も面倒なのだから仕方がない。この夏も多くの高齢者が、熱中症の犠牲になられている。「窓も開けず、エアコンもつけていなかった」「まちがって暖房になっていた」「設定温度が30度になっていた」など、どれもが父にも起こりうる。
水分補給にもひと苦労
水分補給も意外に難しい。ペットボトルのお茶や水を渡しても、一口か二口飲んで床に置くと、もう飲まない。気が付くと、父のベッドの奥の床に、中身が入ったペットボトルが何本も並ぶことになる。かといって、何も渡さないと飲まないし、夜に寝起きの体で階段を下りて飲むと、転倒の危険がある。そこで今年の夏は、父の部屋がある2階の洗面台にコップを置き、夜は、父がトイレに立ったことに気づいたら、「水を飲んで」と声をかけることにした。また、ゼリー飲料は好きなようで、最後まで飲むことがわかったので、1日に一つ、ゼリー飲料を渡し、あとは食事の時のお茶や水で何とか脱水にはならなかったようだ。
そろそろ涼しくなるようで多少ほっとするが、それはそれで、エアコンの適温を探らないといけないし、「寒い」と言って、勝手に父が冬用布団や毛布を出して、また大汗をかくかもしれないので、悩みの日々は続くだろう。願わくは、暑い日と肌寒い日が交じらず、涼しい日がずっと続きますように。(田中亜紀子 ライター)
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我が家の母も前頭側頭型認知症です。
同じく暑さの感覚が鈍く、真夏でも窓閉め切って冬布団かぶって大汗かいていて危険でした。
昨年はエアコンの元のコンセントまで抜いてしまうので、金具を取り付けて取れないようにしましたが、今年はもう探すそぶりもありません。(布団はかぶりたがるのですが、隣のベットに置いてあってもそれを使うとは繋がらないようです)
あぁ、母と同じだと読みながら、この一年で進行したんだなぁと実感した出来事でした。
ピック病の方の介護記録はあまりお見かけしないので、読めて良かったです。これから他の話題とご本も読んでみたいと思います。
ようやく涼しい日もでてきましたね。エアコン問題から少し解放されるのでホッとできるかな?どうぞお身体ご自愛ください。
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