産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」
医療・健康・介護のコラム
「不祥事がばれた」……私の耳元でささやきかけるのは誰?
精神科医の相談室に、本人と産業医、部長、妻が入室します。
精神科医:精神科医の夏目です。あらましは産業医や部長から聞きました。
朝倉さん:朝、出勤途中で突然。急に……です。私だけに命令している。「破滅させるぞ」と。先生には聞こえませんか?
精神科医:声が聞こえるんですね。今も。命令してくる。つらいでしょう。
妻 :何が何だかわからないです。突然で。何とかなりませんか。
朝倉さん:命令を止めてほしい。
薬を飲めば、命令は消える
精神科医:良い薬があります。飲めば数日で命令は減っていきますよ。
朝倉さん:お願いします、飲みます。
精神科医:仕事は無理なので、診断書を書きます。しばらく自宅でのんびりしてください。睡眠不足ですから、寝てくださいね。
妻 :自宅で対応できますか?
精神科医:お薬を飲んで、自宅でのんびりしていればOKです。
朝倉さん:自宅にいます。外に出ると怖いですから。
精神科医:これが会社に出す診断書です。お薬の処方箋です。きっちり飲んでください。奥さんだけ残っていただけますか。
朝倉さん:私は外で待っています。
精神科医:簡単に今の状態の説明をします。突然で驚かれたでしょう。急に発生しますので。精神の病です。命令する声は専門的には幻聴と言います。本人にだけ聞こえる声で、心の病気に伴って発生します。「危害を加えるぞ」などの内容が多いですね。薬を飲めば幻聴は治まっていきますから、安心してください。
薬で症状を抑えれば、仕事に復帰できる
妻 :働けるようになりますか? 私は専業主婦で子どももいて。
精神科医:幻聴はなくなります。そうなれば命令や恐怖は消えますから、働けるようになりますよ。
妻 :わかりました。復帰できるようになるのですね。あなた、そうしましょう。働ければ。
朝倉さん:わかった。
精神科医:診断書を書きました。薬を受け取って、飲んでくださいね。睡眠を取れば疲れがなくなります。しばらくはのんびり過ごしましょう。来週、また受診してください。
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