宋美玄のわーままクリニック
医療・健康・介護のコラム
総裁選で注目「不妊治療の保険適用」 でも、若いうちに妊娠できる社会づくりも重要です
自民党総裁選の各候補者が少子化対策について持論を述べる中で、菅義偉氏が、「不妊治療を保険適用に」という政策提案をして話題になっています。
団塊ジュニアは生殖年齢を卒業へ
私は2015年、内閣府の少子化危機突破タスクフォースの委員だったため、少子化対策については、多面的な議論の場にいたのですが、その頃から、不妊治療の高額な自己負担は議題にされていました。しかし、出生数の大幅な増加が期待されるわけではなく、他の政策案より後回しとなっていた印象でした。
その後、人口の最後のボリュームゾーンである団塊ジュニアが生殖年齢を卒業しつつあることから、高度な不妊治療である体外受精を受ける人は、すでに減少傾向となっています。ですから、「不妊治療を保険適用に」を少子化対策の大きな柱として語ることには、懐疑的な思いもあります。しかし、実際に不妊治療を必要としている患者さんはいらっしゃいますから、その負担軽減を議論することは大切だと思います。
「助成金の拡大」か「保険適用」か
現在、タイミング法までの不妊治療には保険が適用されていますが、人工授精や体外受精などの高度な治療については自費診療となっており、数万円から数百万円の治療費がかかります。自治体からの助成金はありますが、夫婦合算の所得が約730万円未満などの所得制限があり、対象外の患者さんも多いのです。また、女性が43歳未満といった年齢制限もあります。年齢とともに妊娠できる確率が下がるためですが、助成金が創設されるときには、何歳で線引きすべきかについて、かなりの議論がありました。
タスクフォースの議論では、不妊治療の自己負担軽減のための制度として、「助成金の拡大」と「保険適用」を比較しました。所得制限を撤廃したり、助成金の対象となる治療(現在は体外受精のみ)を増やしたりして、助成金をもらえる層や額を増やす方法と、健康保険を適用して窓口での支払額を減らす方法です。助成金の拡大だと、治療費は現在と同様、施設ごとに自由な価格設定となります。これが保険適用となれば、日本全国、どこの施設でも同じ価格になります。国民皆保険制度の特徴ですが、どんな医師の診療を受けようと、どんな地価や人件費の地域で受けようと、同一医療行為に同一価格となります。
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