中川恵一「がんの話をしよう」
医療・健康・介護のコラム
命にかかわらない「がん」もある 発見してマイナスも
命や生活にかかわらないようながんを早期に発見する「過剰診断」が、国レベルで進んでしまったのが、お隣の国、韓国です。

韓国では、1999年から始まった国主導のがん検診で、乳がん検診のオプションとして、甲状腺がん検診も受けられることになりました。すると、甲状腺がんの発見が急増し、およそ20年で患者数が15倍にまで増え、2012年には、女性のがんの約3分の1が甲状腺がんとなりました。
一方で、甲状腺がんによる死亡率は、全く下がりませんでした。もともと、このがんで命を落とすことが、極めてまれだからです。
そこで14年ごろから、科学者が甲状腺がんの過剰診断に対して警鐘を鳴らし、マスコミも大きく取りあげました。「アンチ過剰診断」とも言えるキャンペーンが展開された結果、甲状腺がん検診の受診者数はピーク時から半減し、発見数も激減しています。ジェットコースターのようなアップダウンです。

福島県の甲状腺がん検査では
日本でも同じような「過剰診断」の例があります。福島県の甲状腺がん検査です。
20年現在、福島第一原発の事故から9年がたちました。1986年に起きたチェルノブイリ原発事故と比べ、住民の被曝 量が少なかったのは不幸中の幸いでした。
チェルノブイリの事故後、約7000人の子どもに甲状腺がんが見つかったことから、福島県でも、2011年の事故当時18歳以下だったすべての県民に、甲状腺検査を行ってきました。その結果、小児甲状腺がんとその疑いがあるケースは、200人を超えることがわかりました。これについて、「チェルノブイリと同じことが福島でも起きている」といった報道も一部で見られましたが、誤解です。県民健康調査検討委員会も、国際原子力機関や国連科学委員会といった国際機関も、「小児甲状腺がんの多発と放射線被曝の関連は認められない」と報告しています。
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