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僕、認知症です~丹野智文46歳のノート

もっと知りたい認知症

認知症の人とGPS 自分から持つ国、周りが持たせる国

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位置情報を夫がチェック

認知症の人とGPS 自分で持つ国、周りに持たされる国

 「自分が全く信用されていないのがつらい」。ある若年性認知症の女性がそう言って、表情を曇らせました。

 その人は、夫からGPSを渡されて、肌身離さず持ち歩くように言われているというのです。夫は、自分が会社に行っている間に女性が1人で出かけて道に迷うんじゃないかと心配でたまらず、勤務中にGPSの位置をチェックしているのだとか。

 妻への愛情が背景にあるのはわかりますが、これでは本人は息が詰まります。GPSの入ったバッグを家に置いたままこっそり外へ出て、なるべく短時間で戻るようにしているそうです。私が、「GPSなんて、ルンバ(ロボット掃除機)に乗せておいて、自分は好きなところに行けばいいじゃない」と言ったら、「あはは」と笑って、やっと明るい顔を見せてくれました。

本当に必要? 何重もの対策

 スコットランドなどでは、認知症の人が自分の意思でGPSを持っています。そうした国々では、認知症の人が1人で外出するのが当たり前。GPSは、本人が安心して出かけるための便利なツールなのです。

 一方、日本では、認知症の人がGPSを使う時は、周囲が決めることがほとんどです。元々、認知症の人の外出には家族が付き添うのが一般的で、GPSを持つようになっても、誰かが送り迎えをしています。そのうえさらに、「緊急時の連絡用に」と携帯電話を持たせていることもあるのです。

 携帯が使えるなら、GPSはいらなくない? っていうか、送り迎えするんだから、そもそも道に迷ったりしないんじゃ……なんて、首をかしげてしまいます。

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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