僕、認知症です~丹野智文46歳のノート
もっと知りたい認知症
認知症の人とGPS 自分から持つ国、周りが持たせる国
位置情報を夫がチェック
「自分が全く信用されていないのがつらい」。ある若年性認知症の女性がそう言って、表情を曇らせました。
その人は、夫からGPSを渡されて、肌身離さず持ち歩くように言われているというのです。夫は、自分が会社に行っている間に女性が1人で出かけて道に迷うんじゃないかと心配でたまらず、勤務中にGPSの位置をチェックしているのだとか。
妻への愛情が背景にあるのはわかりますが、これでは本人は息が詰まります。GPSの入ったバッグを家に置いたままこっそり外へ出て、なるべく短時間で戻るようにしているそうです。私が、「GPSなんて、ルンバ(ロボット掃除機)に乗せておいて、自分は好きなところに行けばいいじゃない」と言ったら、「あはは」と笑って、やっと明るい顔を見せてくれました。
本当に必要? 何重もの対策
スコットランドなどでは、認知症の人が自分の意思でGPSを持っています。そうした国々では、認知症の人が1人で外出するのが当たり前。GPSは、本人が安心して出かけるための便利なツールなのです。
一方、日本では、認知症の人がGPSを使う時は、周囲が決めることがほとんどです。元々、認知症の人の外出には家族が付き添うのが一般的で、GPSを持つようになっても、誰かが送り迎えをしています。そのうえさらに、「緊急時の連絡用に」と携帯電話を持たせていることもあるのです。
携帯が使えるなら、GPSはいらなくない? っていうか、送り迎えするんだから、そもそも道に迷ったりしないんじゃ……なんて、首をかしげてしまいます。
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