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感染力の強い「ロタウイルス胃腸炎」 脳炎で後遺症のリスクも…10月定期接種化
副反応で注意すべき「腸重積」
20年10月、ロタウイルスワクチンはついに、わが国でも定期接種になります。これまでも、任意接種で約60%以上の接種率とされていましたが 4) 、定期接種化で100%近くになると予想され、さらなる患者減少が期待されています。接種スケジュールは、生後2か月(8週)からの初回接種となると考えられています。 6)
ワクチンには2種類あるとお話ししましたが、それぞれの接種方法は異なります。1価ワクチン(ロタリックス)は、生後6週以降に4週以上の間隔をあけて2回、経口接種し(注射ではなく飲むワクチンです)、24週までに完了します。一方の5価(ロタテック)は、生後6週以降に4週以上の間隔をあけて3回、経口接種し、32週までに完了します。
初回接種が生後15週以降になると、副反応として、腸重積のリスクが上がるとされており、日本小児科学会は、生後8週~14週6日までに初回接種を行うことを推奨しています。
ワクチンの副反応には、下痢、嘔吐、胃腸炎、発熱などが1~5%ほど出るとされています。一番知っておいてほしいのは、この腸重積です。1回目の接種後1週間以内に、腸重積を発症することが 稀 にあるのです(10万人あたり1~5人)。
腸重積 7) とは腸の中に腸がもぐり込んで重なってしまう病気で、一般的に生後3か月以降で発症し、多くは1歳未満です。原因は不明ですが、胃腸炎や風邪などの後に多いとされています。もぐり込んだ腸が締め付けられるため、血液が十分に行かなくなったり、出血して血便が出たりすることもあります。放っておくとさらに締め付けられ、腸自体が腐った状態になってしまうため、できるだけ早く、もぐり込んでしまった腸を元に戻す必要があります。もぐり込んだ時間が24時間を超えると、開腹手術が必要になる可能性が高くなります。
腸重積を疑う症状には、以下があります。
- 15~30分おきに不機嫌な様子を繰り返す
- 何度も嘔吐を繰り返す
- イチゴゼリーのような血便が出る
他には、ぐったりして顔色が悪いなども見逃してはいけない症状です。
この病気は早く見つけて治療することが非常に大切です。前述したように、初回ワクチン接種が生後15週以降になるとリスクが高くなるとされていますが、14週6日より前に接種したから腸重積が起こらないわけでもありません。したがって、接種後(特に初回)7日以内は、腸重積を疑わせる症状が出現したら、速やかに医療機関を受診する必要があることを、保護者だけでなく、子どもを預かる家族、保育所などの関係者もしっかりと知っておくことが大事です。 8)
定期接種の対象は20年8月以降生まれ
なお、時々相談されることですが、ワクチンが口から多少こぼれても、赤ちゃんの飲み込みが確認できれば、再接種の必要はありません。1価と5価のワクチンを交互に接種することはできません。
また、10月から始まる定期接種の対象者についても注意が必要です。定期接種の対象となるのは、20年8月以降に生まれたお子さんです。7月までに生まれたお子さんは任意接種となりますが、腸重積のリスクを考え、生後2か月になったら受けてください。
今回はロタウイルス感染症についてお話ししました。乳幼児期は様々なワクチンがあり、今回さらに定期接種が増えました。いずれもとても大切なワクチンですが、ちょっと分かりにくく、不安な方もいらっしゃるかと思います。少しでも理解のお役に立てればと思います。(坂本昌彦 小児科医)
- 参考文献:
- Clin Infect Dis.2016;62 Suppl 2:S96-S105.[PMID:27059362]
- N Engl J Med.1996;335(14):1022-1028.[PMID:8793926]
- 河島尚志他:ロタウイルス関連脳炎・脳症.臨床と微生物47(2)131-136,2020
- 日本におけるロタウイルスワクチンの効果:IASR,vol.40,212-213:2019
- Western Pac Surveill Response J.2016;7(4):28-36.[PMID:28246579]
- 日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 2020年1月版
- 日本小児救急医学会ガイドライン作成委員会:エビデンスに基づいた小児腸重積症の診療ガイドライン,へるす出版,東京,2012
- 日本小児科学会:日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール「ロタウイルスワクチンの初回接種時期について」(第2版)
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