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医療・健康・介護のコラム

感染力の強い「ロタウイルス胃腸炎」 脳炎で後遺症のリスクも…10月定期接種化

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通常の衛生管理で制御は困難

 ロタウイルス胃腸炎の問題は、様々な合併症があることです。

  1. けいれん
    熱性けいれん、胃腸炎関連けいれんなどを起こしやすい。
  2. 脳炎
    意識障害や長引くけいれんを伴い、重い脳炎を起こすことがある。後遺症の出るケースが38%もあったという報告もある。 3)
  3. 腸重積
    ロタウイルスの感染症が原因で腸重積を起こすこともある。腸重積の詳細は後で紹介。

 症状が回復しても、1週間は便にウイルスが 排泄(はいせつ) されます。オムツを適切に廃棄し、石けんでの手洗い、次亜塩素酸での衣類の消毒などを徹底する必要があります。しかし、ロタウイルスの粒子は非常に安定しており、感染力も非常に強いです。患者1人の下痢の中には、便1グラムあたり100億~1兆個ものウイルスが存在していますが、ヒトからヒトへは、わずか100個のウイルスがあれば感染してしまいます。したがって、先進国であっても、通常の衛生管理だけで、この感染症を制御することは困難です。

初回感染の代わりにワクチンを

 感染力が非常に強く、時に死亡や重症化をもたらすロタウイルス胃腸炎を予防する最も有効な手段がワクチンです。前に、ロタウイルスは複数回感染する可能性があり、初めての感染で重症化しやすいとお話ししました。逆に言えば、2回目以降は、1回目ほど重症化しません。この性質を利用し、初回感染の代わりに、ワクチンで同様の免疫を得ることができれば、その後、実際にロタウイルスに感染しても軽症ですむだろう、という狙いです。そうして、最も重くなりやすい初感染を軽くできれば、入院や死亡といった重い結果に至るのを防ぐことができます。

 ここまでの話でお分かりいただけるように、このワクチンを接種しても、感染そのものを防ぐことはできません。しかし、重症化の予防が期待できます。「ワクチンを打ってもかかったから意味がない」わけではないことを、知っていただければと思います。

1価と5価 2種類のワクチン

 ロタウイルスワクチンには、1価(ロタリックス)と5価(ロタテック)という2種類のワクチンがあります。これらはどう違うのでしょうか。

 ロタウイルスには、遺伝子の型によっていくつかの種類があります。1価ワクチンは、最も高頻度に存在する型(G1P[8])から作られたワクチンで、5価はヒトのロタウイルスの9割を占める5つの型から作られたワクチンです。つまり1価と5価は、成分として含まれているワクチン株の数を意味します。何となく、5価の方がカバー範囲が広く、効きそうな気がしますね。しかし実際は、大規模な臨床試験の結果、1価のワクチンであっても、ワクチンに含まれていない他の型のロタウイルス腸炎まで十分防御できることが分かっており、どちらを選んでも効果は同等と考えてよいでしょう。

 これらのワクチンの実際の効果はどれくらいなのでしょうか。海外では、ロタウイルスワクチン導入後に、この感染症による死亡や重症下痢症が大きく減少しました。09年、世界保健機関(WHO)は、ロタウイルスワクチンを各国の定期接種に導入することを推奨しました。 4)  現在では、世界130か国以上で承認され、100か国以上で定期接種になっています。日本でも11年から任意接種として導入され、ロタウイルス胃腸炎による入院率は85%減少する 5) など、多くの研究でワクチンの有効性が十分に認められています。

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坂本昌彦(さかもと・まさひこ)

 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
 2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。

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