田村専門委員の「まるごと医療」
医療・健康・介護のコラム
「新型コロナウイルスとの闘い」を記録
医療現場からの声 NPOなどが出版
「新型コロナウイルスとの闘い 現場医師120日の記録」を読んだ。特定非営利活動法人「地域医療・介護研究会JAPAN」と株式会社ヘルスケア・システム研究所の共著で、8月に出版された。「地域医療・介護研究会JAPAN」は2018年7月に設立されたNPOで、兵庫県の赤穂市民病院院長を長く務め、全国自治体病院協議会会長などの役職も歴任した辺見公雄さん(全国公私病院連盟会長)が会長を務めている。
出版に至った理由について、本のまえがきには「なるべく早い段階で、そのとき現場がどのように動き、何を感じたのかを残すことに意義があると考える」こと、コロナ後の医療・社会のあり方を考えるうえで「現場で何が起こったかを正確に検証することこそがその第一歩であろう」などと述べられている。
マスク配布は週に2枚
「医療・介護現場はかく闘えり」と題された第1章は、新型コロナウイルス治療の最前線に立った感染症指定病院の院長をはじめ30人近い人々の証言を集めた。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗客らの治療にあたった病院では、患者がどれだけ増えるのかが分からない問題に直面する恐怖のなかで、病床やマンパワーの確保をはじめどれだけの態勢を整えればいいのかという悩みにまず直面した。また、外国人の患者とコミュニケーションをとるうえで防護服を装着した状態での聞き取りや視認障害も加わり、急ぎ購入した音声翻訳機が役に立ったとのエピソードや、多くの病院から受け入れを拒否されていた腸閉塞(へいそく)を起こした乗客を受け入れたところ、後から感染が分かったケースなど、現場の生々しい実態が描かれている。
また、ある病院長は、物資不足が最もひどかった時期には、マスクを週に2枚の配布に制限せざるをえなかったことや、そんな中でも高齢患者の介護のために時間・労力とともに多くの個人用防護具を消費せざるを得なかった現場の実態に触れた。防護具の供給を中国などに依存してきた問題は多くの人々が指摘し、「採算性を抜きにした生産ラインの確保など、国を挙げての取り組み」を求める声もあがった。
地域医療を支える病院の立場として、全国自治体病院協議会の会長は、「赤字であっても取り組まなければならない医療が存在し、そのためには稼働率の悪い病床、機能であっても確保しておく必要がある」こと、今回の新型コロナウイルスの問題などを通じて「本来、医療には効率性、経済性にこだわってばかりいては機能を発揮できないものがある」ことへの理解を改めて訴えている。
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医療のみならず日本という国家の抱える弱点が露呈しました。 (もっとも、日本はましな方だと思います。) 医療現場での問題も大変でしょうが、その前提...
医療のみならず日本という国家の抱える弱点が露呈しました。
(もっとも、日本はましな方だと思います。)
医療現場での問題も大変でしょうが、その前提になる医療内外物資の補給や人材、仕事の管理やフローの設計を見直さないといけないのは本文の通りだと思います。
新型コロナの前から、欧州でも周辺途上国に移管されていた服などの生産がオートメーションの進化により国内回帰を始めていました。
今後は日本もそれに倣っていくべきでしょうし、生産に保管、時間や空間、仕事などのフローの運用のやり方を考える必要があります。
新型コロナの第三波もさることながら、他の感染症や災害、そして他国の戦争の影響が出た場合の準備も併せ持つべきなのでしょう。
テレワークの推進だけでなく、拠点の適度な分散化や予備のスペースなどの作成や運用など、法制度や資金も含めて色々と大事になると思います。
遠隔医療に関しては医療人の個人差、地域差や施設差もあって、難しい政治的側面もありますが、そういう部分も含めてみんなで考える必要がありますし、改善されて住みやすい地域から人口や地域の就業人数も増えると思います。。
前項が、薬剤師本来の仕事ですが、専門職が本来の仕事をするには同僚に関連職種や顧客側の理解や協力が不可欠です。
そういう事であれば、逆説的ですが、本来の仕事でない仕事を部分的にあるいは全体的に請け負う医療人も重要になってくると思います。
医学生の時に見学に行った救急病院で、患者のベッドコントロールに腐心する若手医師が「こんなの医者本来の仕事じゃないけど誰か現場の仕事全体をわかっている人間がやらないといけない」と言っていたのを思い出しますが、医療の結果としての健康や寿命は衛生環境以外など純粋な医療以外に大きく左右されるので、全体の改善も目指してすり合わせていく必要があります。
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