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妊婦のサイトメガロウイルス感染…子どもに障害の恐れ

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 妊娠中に感染すると、赤ちゃんに難聴などの重い障害が起きる恐れのあるサイトメガロウイルス。生まれてくる赤ちゃんの約1000人に1人の割合で障害が出るとされる。子どもの唾液や尿が主な感染ルートだが、治療薬やワクチンがないため、妊娠中に感染しないよう注意することが重要だ。(東礼奈)

妊婦のサイトメガロウイルス感染…子どもに障害の恐れ

 サイトメガロウイルスは、唇に 水疱すいほう ができる原因などとなるヘルペスウイルスの仲間で、季節を問わず、世界中のどこにでもいるウイルスだ。主に子どもの頃に感染し、生涯にわたり体内に潜伏する。しかし、妊婦の3割は以前に感染したことがなく、ウイルスを抑える抗体を持たない。

 手洗いなどの予防をしないと、妊娠中に1~2%が感染する。胎盤や血液を通じて胎児にもうつる確率は高く、40%に上る。一方、妊婦の7割は感染歴があり抗体を持つが、潜伏するウイルスが増える再活性化や再感染により、まれに胎児が感染することもある。

  小頭症や肝炎、難聴

 健康な大人や子どもが感染しても、多くは軽い風邪症状か、ほとんど症状がなく、気づかない。しかし、妊娠中に感染した場合、赤ちゃんが低体重で生まれたり、頭が小さい「小頭症」や脳の異常、紫斑、肝炎などの症状が出たりして難聴や視覚障害といった重い後遺症が残る可能性がある。4歳児の難聴の4分の1はこのウイルスによる感染症が原因との報告もある。

 感染した胎児のうち20~30%は出生時に何らかの症状があり、うち90%に障害が残るとされる。出生時に症状がなければ90%が正常に発達するが、10%は半年以上後に障害が出てくる。

 胎児の超音波検査(エコー)で発育不全などの疑いがあったり、低体重で生まれたりした場合や、聴覚検査で異常があれば、生後3週間以内に、尿検査で感染の有無を調べる。こうした尿検査は、2018年に公的医療保険が適用された。

 最近の研究では、妊娠中に発熱やせきなどの風邪症状があったり、妊娠中期に切迫流産や切迫早産になったりしたときは、胎児が感染しているリスクが高いことも分かってきた。

 サイトメガロウイルスは、感染者の体液を介して感染する。感染歴のある母親の母乳にもウイルスは含まれるが、多くの赤ちゃんは、母親から抗体が受け継がれており、問題はない。

 妊娠中は、上の子の育児や保育士の仕事などで、乳幼児に触れる機会の多い人は要注意だ。感染した子どもの唾液や尿にはウイルスが持続的に潜むからだ。子どもの世話をした後はこまめな手洗いが大切だ。

  早期投薬で改善も

 母子感染して赤ちゃんに症状が出ても、出生後2か月以内に抗ウイルス薬を使えば、聴力などが改善したり、問題なく成長できたりする可能性がある。神戸大や東京大などを中心に、医師主導治験が今年2月に始まった。薬の有効性が確認できれば、数年以内に広く治療を受けられるようになると期待されている。

 神戸大産科婦人科教授の山田秀人さんは「最も重要なのは妊娠中に感染しないことだ。妊娠中に風邪症状があった場合や、赤ちゃんが低体重で生まれたら、生後3週間以内に尿検査を受けてほしい」と話す。

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