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リングドクター・富家孝の「死を想え」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナ時代に考える終末期医療のあり方

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欧米では延命治療をしない選択も

 スウェーデンでは、80歳以上で基礎疾患があるコロナ患者の延命治療は行われなかったといいます。そのため、高齢者施設での死者が多く、こういう患者は病院に搬送せずに尊厳死になったわけです。また、イタリアなどの欧州諸国、アメリカのニューヨークなどでは、一時期、病院に患者があふれました。このときは、「命の選別」(トリアージ)が行われました。人工呼吸器などの数は限りがあるので、呼吸不全に陥った患者のうち、高齢で基礎疾患がある患者は切り捨てる以外になかったからです。また、心肺蘇生を実施することが無益であると医師が判断した患者も、人工呼吸が行われませんでした。

 医療資源のキャパシティーにも関係することであり、日本では国も専門家の会議も「医療を 逼迫(ひっぱく) させない」ことを強調してきました。必要な医療を受けることができる状態を維持するのは重要ですが、医学的に無益であったとしても、患者や家族の希望を拒否することはできません。

 生命を救うことが医者の最大の義務ですが、治療を尽くしても、救命ができないこともあります。欧米では新型コロナの感染拡大が始まるのとほぼ同時に、終末期医療の意思決定、緩和ケアに関する議論が始まりました。しかし、日本では、重症者数が少ないこともあり、ほとんど行われてきていません。

秋冬に向けて人生会議を

 これからインフルエンザの季節になり、新型コロナの感染拡大と重なることが懸念されています。そこで、国は、重症者用のベッドの確保、治療機器の確保、医療スタッフの確保など、物理的な医療リソースを充実させようとしています。しかし、それと併せて必要なことは、基礎疾患を持つ高齢者とそのご家族の「人生会議」です。

 近年は、終末期の患者さんへの延命治療の中止の件数は多くなっています。取りやめた治療内容は、昇圧剤の投与、人工呼吸、人工透析などです。新型コロナで重篤化すれば、選択を迫られる事態はすぐに訪れます。 

 死が避けられない局面に至った時、人間が人間らしく死んでいける、そういう社会を私たちは目指すべきではないでしょうか。(富家孝 医師)

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富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている。

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