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リングドクター・富家孝の「死を想え」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナ時代に考える終末期医療のあり方

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新型コロナ時代に考える終末期医療のあり方

 9月になって、新型コロナの感染拡大の第2波は収まってきましたが、死亡者は毎日のように報告され、累計死者数は1300人を超えました。それでも、人口100万人あたりで比較すると、日本の10に対して、感染者数第1位のアメリカや第2位のブラジルは500を大きく超えています。集団免疫戦略を取ったとされるスウエーデンは、人口は日本の約12分の1で死者数は5800人以上。日本がスウエーデンと同じ死亡率とすれば、死者数はなんと約7万人に達します。

死生観の違いが新型コロナ死亡者数に影響?

 全般にアジアは、欧米諸国に比べると死亡者数を抑えることができています。日本の場合もコロナ対策が優れていた、成功したという見方があります。しかし、私にはとてもそうとは思えません。

 日本人が新型コロナに対する交差免疫を持っていた、新型コロナウイルスが変異して欧米の流行種とは違っていた、日本の医療レベルが高い、新型コロナ死の判定基準がによってまちまちなど、いくつかの説が唱えられていますが、もう一つ、声高に言われていないことがあります。

 それは、日本人の死生観が欧米とは大きく異なっているということです。日本では、徹底して延命治療が行われているということです。

リビング・ウィルが明確な人は少ない

 新型コロナの現場で治療にあたっている医師何人かに確かめましたが、重篤化してICUに入った患者さんで、「生前意思」(リビング・ウィル)が明確だった人はいないとのことでした。もちろん、これは私が聞いた範囲での話です。リビヴング・ウィルとは、終末期にどこまでの医療措置を希望するか、どのように死んでいくのかという意思表示のことです。これを事前に医療者も交えて家族で話し合っておこうというのが、厚生労働省が進める「人生会議」です。

 「人生会議」は、以前は、「エーシーピー」(ACP)と呼ばれていました。ACPは、英語の「アドバンス・ケア・プランニング」のことで、患者さんと家族、医療側が終末期医療について話し合っておく取り組みです。事前に人生会議をしておかないと、終末期に患者本人も家族も、医療側もどのような医療をしていいかわかりません。

高齢者にとっては死に直結する病気

 新型コロナの場合、重篤化するのはほとんどが高齢者で、基礎疾患を持っている方です。東京都のデータ(7月31日発表)では、新型コロナウイルスに感染し、6月末までに死亡が確認された325人の平均年齢は79.3歳。その大半が糖尿病、高血圧、腎疾患などを患っていました。70歳以上の死亡率は25%という数字も公表されています。日本の死亡者数が少ない印象とは異なり、高齢者や基礎疾患のある人にとっては死に直結する危険のある病気なのです。

 また、重篤化するのは急で、いったん重篤化すると回復は困難になるのが新型コロナの特徴とされます。つまり、治療はあっという間に終末期を迎えてしまうのです。となると、現場の医師は患者さんを前にして、重大な選択を迫られます。

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富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている。

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