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アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直

医療・健康・介護のコラム

わが子を悪く言うようで…葛藤する障害程度の調査 慣れてるつもりでも

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 「なんかやったな!」

 キッチンで妻が叫んでいる。言われてみると、家じゅうにいい匂いが漂っている。これはシャンプーかボディーソープだろう。

 匂いのする液体があると、洗面所に全部、流してしまうという行為に洋介がハマってしまったのは、この5年ほどだろうか。シャンプー類ならいいが、化粧品や洗濯用の洗剤や漂白剤などに手を出すこともあるので、気をつけなければならない。歯磨きのチューブも好きで、これは一気にギュッと絞り出す。大量に流れだすのが面白いのか、気持ちよいのか。たぶん、スカッとするのだろう。キッチンにも魅力的なものが多く、ペットボトルを逆さまにし、豪快に全部流してしまい、家族のひんしゅくを買うのだ。

イラスト:森谷満美子

イラスト:森谷満美子

 なので、こちらもボトル類は隠し場所を決め、シャンプーなどの詰め替えの際には中身をいつも半分以下にキープし、流されても被害が少ないようにしている。しかし、敵もさるもので、家の中であればだいたい探し出すし、この日は買ってきたばかりの洋介用のトニックシャンプーが、一度も使わないまま餌食になってしまったので、買ってきた妻のショックは大きかった。

 「もう、洋ちゃんにはかなわないわ……」などと嘆きながら、妻はふと何かを思い出したもよう。「これも明日、言おうかな」

障害支援区分 調査は“真剣勝負”

 翌日は、市が洋介の障害支援区分を判定するため、面談をする日なのだった。洋介は最重度の「6」判定を受けている。区分は受けられる福祉サービスや事業所への報酬にかかわるから、この面談は思いのほか“真剣勝負”となる。本人の状態が現実に良くなってはいない以上、区分は維持したい。

 しかし問題は、洋介にも一応、「よそ行きの顔」があって、知らない人の前だと妙におとなしく、妙に聞き分けがよくなってしまうことだ。普段の 狼藉(ろうぜき) ぶりが影を潜め、「実際よりも軽い判定を受けてしまうのでは?」と心配になる。

 厚生労働省が示す調査項目は、「寝返り」「歩行」など身体的なことや、「食事」「入浴」「排泄はいせつ」などの自立度、「金銭管理」「電話」など社会的なことなど多岐に及ぶ。主治医の意見書も必要だ。面談で普段の様子を伝えるとなると、結局、わが子の「できないこと」「問題行動」を、親が自ら並べ立てる状況になる。「食事は一人でできません」「お風呂では自分でちゃんと洗えません」……。

 前回は3年前で、市の調査員の前に、本人と妻と通所施設の施設長が臨んだが、畑仕事の途中だった洋介が顔じゅうに自分で泥を塗りつけた状態で登場するというナイスアシストがあった。

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umezaki_masanao_prof

梅崎正直(うめざき・まさなお)

ヨミドクター編集長
 1966年、北九州市生まれ。90年入社。その年、信州大学病院で始まった生体肝移植手術の取材を担当。95年、週刊読売編集部に移り、13年にわたって雑誌編集に携わった。社会保障部、生活教育部(大阪本社)などを経て、2017年からヨミドクター。

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2件 のコメント

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代弁者として

リフレーミング

 調査もそうですが、日ごろの支援者とのやり取りも、本人の代弁者としての使命と思いながら臨んでいます。  仰る通り、この調査結果が軽くなると、障害...

 調査もそうですが、日ごろの支援者とのやり取りも、本人の代弁者としての使命と思いながら臨んでいます。
 仰る通り、この調査結果が軽くなると、障害福祉サービスの色々な事に影響が出ますね。私の息子は知的障害がありますが、障害程度は変わらない、或いはできないことが増えていたのに、先日の調査で障害区分が一段階軽い結果になってしまいました。夫が調査機関に問い合わせたところ、私が“できない”と答えた項目のいくつかは、“できる”にチェックが入っていたことがわかりました。私の説明の仕方が誤解を招いたのか?情けない思いでした。
 現状と異なる結果でしたので、再調査を依頼したところです。今度は夫が立ち会うことにしました。

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一気に読ませていただきました。

場末の施設長

ふとこちらの記事を見つけ、読ませていただきました。 私自身、療育施設、入所施設、通所施設を経験し、現在は場末の施設長をしております。 職員を指導...

ふとこちらの記事を見つけ、読ませていただきました。
私自身、療育施設、入所施設、通所施設を経験し、現在は場末の施設長をしております。
職員を指導・教育(というエラそうなものではありませんが…)を行う立場にあり、私の経験の中から職員へいろんなお話や研修をさせていただいております。
此方の記事は親御さんの立場から、客観的な視点もしっかり交えつつとても読みやすく記事にされているので、非常に興味を持って一気に読ませていただきました。
障害福祉サービスも多様化しておりますが、どこかビジネスライクになりつつある中で、職員一人ひとりが人の想いや家族の記録に触れ、何かを感じ取ることが少なくなってきていることに危機感を感じている中、こちらの記事を見つけることができありがたく感じております。
私が何かを指導することよりも、職員一人ひとりが何かを感じ取っていただければと思いますので、梅崎さんの備忘録を紹介させていただきます。

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