夫と腎臓とわたし~夫婦間腎移植を選んだ二人の物語 もろずみ・はるか
医療・健康・介護のコラム
ネバネバ料理にセクシーパジャマも投入!…医師の“解禁”で始まった40歳の妊活 ポリープもコロナも乗り越えて
かれこれ1週間近く腹痛に悩まされていた。左の子宮のあたりがひどく痛み、鎮痛剤のカロナールが効かない。腎臓に悪いという理由から、ロキソニンなど効き目が強い鎮痛剤には頼れない。我慢して、 嘔吐 して、汗だくのまま眠る。やむ気配のない痛みに心が折れ、緊急外来にかけこむと、初期の流産と診断された。
つい先日、8月半ばのことだ。
移植から1年 医師から“妊活の許可”
夫がそう言ったのは、1年前の夏だった。オクラをゆでるのにうまいヘタがあるものかしら、と思ったが、夫いわく、「外はシャキッ、中はトロッとしている」らしい。ほめことばは、夫なりの気遣いでもあった。
腎移植を受けてから1年が経過し、医師から“妊活の許可”をもらった当時の私たちは、自然妊娠を希望していた。「妊活にはネバネバ食材がいいんだって」と夫が提案してくれたので、食卓には毎晩、ネバネバ料理が並ぶようになった。
サプリではなく、ネバネバ食材を食べる。なるべく自然に振る舞おうとするのは、過去の苦い経験があるからだ。以前、このコラムにも書いたのだが、私には死産の経験がある。10年前、結婚2年目に男の子を授かったのだが、腎機能の悪化から妊娠中毒症になり、ネフローゼ症候群を併発させたことで、出産を諦めたのだった。
分娩 台の上で、275グラムの息子を胸に抱いた。これが私の、人生で一度だけ経験した親子水入らずの時間だった。息子の指に触れると、キュッと握り返してくれた。10年たっても、息子の感触は、今も私の人さし指に記憶されている。
その経験があるから、自然の流れに身を任せないと、と思っていた。でないと、再び悲しいことが起こる気がしてならなかったのだ。
夫をその気にさせたくて…四苦八苦
ただ、やみくもに愛し合ったところで、コウノトリはやってこない。アラフォーの妊活は甘くないのだ。そこで、毎月、婦人科医に排卵日を予測してもらい、夫婦で“タイミング”を計るようになった。月に1度の貴重なタイミングだけど、一つ腎臓を失った体で仕事に没頭する夫に、「今晩よろしく」なんてプレッシャーをかけるのはなんとなく気が引けた。
夫に悟られることなく“その気”になってもらえばいいのだ。セクシーなパジャマを着てみたり、甘えてみたり。あるとき、せっせとお風呂にアロマをたいていると、「今日、排卵日なの?」とバレバレだった時は、自分のあざとさに引いた。
毎月、生理の時期が近づくと薬局に走り、妊娠検査薬(2本セット)を購入してしまう。今日、陰性反応が出ても、明日は陽性に変わるかもしれない。けれど、思うような結果が出ない。「努力は報われる」と私は信じているけど、こと妊娠においては、妊娠しなかった時点で成果ゼロ。振り出しに戻されてしまう。
3か月が経過した頃、妊娠しない理由がわかった。子宮に大きめのポリープが見つかったのだ。
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