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スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす

医療・健康・介護のコラム

膝の後十字靭帯損傷とは

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 先が見えない新型コロナウイルスの感染状況ですが、新しい生活様式の日常における違和感は減ってきたように思います。スポーツとの付き合い方もまだ手探りの中ですが、できる範囲での感染予防対策をしながら、徐々に再開され始めています。活動自粛にともなうブランクがあると、けがする危険も増えますので、注意していきましょう。今回はラクロス選手のケースです。

 D君は大学のラクロス部に所属しています。練習中、味方からのパスが浮き、ジャンプしてキャッチすることはできましたが、バランスを崩し、膝を地面に強打して倒れこみました。痛みのため、練習を続けることはできず、現場で RICE処置 をしてもらった後、チームメートに連れられて医療機関を受診しました。膝の後十字 靭帯(じんたい) 損傷の可能性で後日にMRI撮影を行った結果、靭帯が損傷していることが確認されました。

直接ぶつけて損傷する靭帯

 後十字靭帯は、直接的な衝撃により損傷することでけがにつながることが多い部位です。膝の前面を強くぶつけることにより、 脛骨(けいこつ) が後方に移動する力が加わり、その結果として後十字靭帯が損傷してしまうのです。スポーツ選手には、むしろ、前十字靭帯を損傷するケースのほうが多く見られます。ジャンプの着地やステップ動作の切り返しなどで膝をひねった際に、 大腿(だいたい) 骨と脛骨が亜脱臼し、それらをつなげている靭帯を損傷してしまうのです。

膝の後十字靭帯損傷とは

 前十字靭帯損傷の場合、手術で靭帯を作り直す必要がありますが、後十字靭帯なら、多くは保存治療で競技復帰が可能となります。治療後に、多少膝のゆるみが残ったとしても、スポーツにおけるパフォーマンスをあまり低下させません。また、復帰後に大腿四頭筋の筋力をしっかりと回復させることで、脛骨が後方に移動するゆるみをカバーできます。大腿四頭筋が収縮すると、脛骨を前方に引きだす作用があり、競技復帰後のパフォーマンス回復を後押ししてくれます。

 それでは、D君の経過です。

 すねの下方から太ももの中央くらいまである着脱可能なテープで、取り外し可能なニーブレース(患部への圧迫を阻止しながら、膝の屈伸をサポートしてくれる関節支持帯)を装着して、日常の歩行には松葉づえを使用しました。可能な範囲内で足をついて荷重をかけ、同時に膝の可動域訓練も痛みの範囲内で開始しました。クリニック内の理学療法士の指導を2回受けながら、自宅でもリハビリのメニューをこなしました。2か月後には痛みも改善し、ランニングのほか、ステップ動作も始めています。

防ぐのが難しいけがも実際多い

 スポーツでは、防ぎようのない偶発的なけがをすることがあります。しかし、後の処置やリハビリにより、その経過や後への影響は大きく変わってきます。筋力強化をする場合は何のためにその筋肉を鍛えているのか、ストレッチではなぜその筋肉の柔軟性が必要なのかなどについて、を理解しているかどうかでは、同じリハビリをしていても効果は異なります。疑問点などは担当してくれる理学療法士に質問して、意義や意味をしっかり理解した上でリハビリを行いましょう。

 一方、内側側副靭帯や前十字靭帯損傷など複数の靭帯損傷が合併している場合は手術が勧められます。そして、靭帯損傷による膝のゆるみは軟骨の摩耗につながり、将来的に変形性膝関節症になるリスクを高めてしまいます。日ごろから偶発的なけがを減らすために、集中力が切れない練習環境を整えること、準備運動をしっかりすること、そして普段から身体の基本的な動作をトレーニングしておくことが大切ですね。(大関信武 整形外科医)

【スポーツ医学検定のご案内】
 私たちは、スポーツに関わる人に体やけがについての正しい知識を広めて、スポーツによるけがを減らすために、「スポーツ医学検定」を実施しています。スポーツ選手のみでなく、指導者や保護者の方も受けてみませんか(誰でも受検できます)。

 5月に開催予定だった第7回スポーツ医学検定は新型コロナウイルス感染症拡大のため、中止としました。お申し込みをされた皆さまには大変ご迷惑をおかけしました。振り替え受検についてはHPでも案内しています。また、第8回スポーツ医学検定は11月の開催予定で、申し込みが始まっています。本文のイラストや写真の一部は、「スポーツ医学検定公式テキスト」(東洋館出版社)より引用しています。

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大関 信武(おおぜき のぶたけ)

 整形外科専門医・博士(医学)、日本スポーツ協会公認スポーツドクター
 一般社団法人日本スポーツ医学検定機構代表理事

 1976年大阪府生まれ、兵庫県立川西緑台高校卒業。2002年滋賀医科大学卒業、2014年横浜市立大学大学院修了。2015年より東京医科歯科大学に勤務。野球、空手、ラグビーなどを通じて、野球肘、肩関節脱臼、アキレス(けん)断裂、骨折多数など自身が多くのケガを経験。スポーツのケガを減らしたいとの思いで、一般社団法人日本スポーツ医学検定機構を設立し、「 スポーツ医学検定 」を開催している。 現在、拓殖大学ラグビー部チームドクター、文京ラグビースクールコーチ兼メディカル担当。2019年ラグビーワールドカップでは選手用医務室ドクターを担当。八王子スポーツ整形外科、蓮江病院でも診療。

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