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山崎まゆみの「心もとろける癒やしの温泉」

医療・健康・介護のコラム

何もないぜいたく。静けさを求めて、トロッコ列車で行く高所の温泉

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 太陽の光は強烈で、じりじりと焼け付くよう。
  陽炎(かげろう) がアスファルトを揺らしています。体感温度は40度くらいでしょうか。
 そんなときには、水と戯れ、せせらぎに耳を澄ませたあの日、あの場所を思い出します。

何もないぜいたく。静けさを求めて、トロッコ列車で行く高所の温泉

何もないところに身を置く「ぜいたくな時間」

 こんもりとした森のそばを流れる 黒薙(くろなぎ) 川の河原のあちこちに大きな岩が点在し、広さ30畳ほどの大きな露天風呂があります。湯船の底には天然の石が敷きつめられ、いかにも大自然に溶け込んでいます。

 ゆっくりと浸かってから、湯上がりには浴衣をはおり、すぐ近くの川の水を浴びに移動します。川ではキリリとした冷たさが体の隅々まで染みわたり、徐々に体温が下がっていくのを実感します。

 黒部の山奥に湧く、富山県黒部峡谷にある黒薙温泉。

 黒部渓谷鉄道の始発、宇奈月駅からトロッコ列車に乗って約25分で黒薙駅へ。そこから山道を20分ほどの徒歩になりますので、歩きやすい靴がおすすめです。

何もないぜいたく。静けさを求めて、トロッコ列車で行く高所の温泉

 宿は黒薙温泉旅館が1軒のみ。テレビもない、簡易な机と布団のみが置かれた部屋の窓の網戸にはたくさんの虫がへばりつきます。夏の昼間は、怖いくらいにセミが鳴いていますが、夜になると、それがぴたりとやみ、耳に届いてくるのは川からの水音のみ。自然とひんやりとした気持ちになります。

 早朝には、再び一斉に鳴き始めるセミの声で目を覚まします。しばらくの間、そんな環境の中に身を置いていると、自分自身が音に敏感になっていくのを感じます。

 ここでは、携帯電話もつながりません。そんな、何もないところに身を置くぜいたくなひとときを、現地では「黒薙時間」と呼んでいるそうです。

渓谷沿いの湯めぐりも

何もないぜいたく。静けさを求めて、トロッコ列車で行く高所の温泉

 肌触りがさらりと柔らかいお湯からは、 () でたばかりの卵のような 硫黄(いおう) のにおいがします。毎分2000リットルもの豊富な湧出量に恵まれているため、人気の旅館がたくさんある宇奈月温泉も、ここから温泉を引いているのです。なお、黒薙温泉旅館の営業は、毎年4月下旬から11月下旬までですので、今の季節はとくにおすすめです。

 ちなみに、トロッコ列車で終着駅の欅平まで行けば、欅平温泉もあるので、深い渓谷沿いの黒部温泉郷の湯めぐりもできるのです。

 人気のトロッコ列車は、シーズンになると混雑することも多いのですが、道中さえしっかりと感染症対策をしておけば、都会に比べれば密を回避できて、静かな温泉地ならではの快適な時間が過ごせそうです。

ハッカ油を入れた自宅湯も

 とはいえ、やっぱり、まだ自由に旅はしにくいですよね。

 最近の私の救いは「ハッカ油」です。家のお風呂に1~2滴たらして入浴すると、湯上がり時にす~す~します。高原の温泉に入浴したようなひんやり気分を味わえますので、まだまだ残暑が続きそうな今の季節には、すごく重宝しています。ただ、入れる量には要注意です。5滴も入れたら、体が冷たくなりすぎちゃいます。

 ちょっと余談になりますが、このハッカ油、ほかにも便利な使い道があるのです。

 暑い季節にマスク着用で外出するのは本当に大変ですね、以前から、日常的な着用に慣れていなかった私ですが、マスクにもハッカ油を一吹きすると、一瞬、息苦しさを忘れさせてくれます。

 まだしばらく続きそうなマスク生活ですが、私にとっては欠かせない愛用品になっています。

黒薙温泉旅館(黒部観光開発株式会社)

黒薙温泉旅館(黒部観光開発株式会社)
【 所在地 】〒938-0282 富山県黒部市 宇奈月町黒薙
【 電 話 】0765-62-1802
【 泉 質 】弱アルカリ性単純温泉(低張性高温泉)
【 効 能 】神経痛、筋肉痛、五十肩、慢性胃腸消化器病、冷え性、()、関節痛、運動まひ、打ち身など
【アクセス】黒部峡谷鉄道・黒薙駅から徒歩20分
【ホームページ】https://www.kuronagi.jp/

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山崎まゆみ(やまざき・まゆみ)

温泉エッセイスト、ノンフィクションライター、VISIT JAPAN大使、跡見学園女子大学兼任講師。世界32か国1000か所以上の温泉を巡り、「温泉での幸せな一期一会」をテーマに各メディアでリポートしている。『続・バリアフリー温泉で家族旅行』(昭文社)等著書多数。最新刊は『行ってみようよ! 親孝行温泉』(昭文社)。内閣官房東京オリンピック競技会・東京パラリンピック競技会推進本部事務局「ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議 街づくり分科会」「ユニバーサルデザイン2020評価会議」に参画し、日本の「バリアフリー温泉」の推進に力を注いでいる。温泉情報はTwitter、FB、インスタグラムで更新中。

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