がんを語る
医療・健康・介護のコラム
頭頸部がん(下) 食べること、話すことのリハビリ 患者会で仲間の姿に励まされ
手術後、転職も経験
――日常生活やお仕事などへの影響はどうですか。
A男 がんになる前は、集合住宅の管理の仕事をしていました。治療で1か月休んだ後に復帰するという口約束だったのが、自己都合の退職ということにされてしまいました。2年近いブランクの後、2018年11月から週3回、働くようになりました。幹部クラスの人は体調を気遣ってくれますが、多くの人はわたしの病気のことをよく知らないのではないかと思います。がん患者の再就職は簡単ではありませんが、働くことは大事だと思っています。
B男 困っているのは食べることです。手術で舌の大部分を切除したことと、口の中の環境が悪くなっているため、歯もしだいに抜けて減っていきます。下の歯は1本残っているだけです。仕事は60歳で定年退職し、特にお金を使うこともないので生活に困っているということはありませんが、半年ごとに検査を受けながら、「いつまで生きていけるのかなあ」と思うことはあります。

山崎(写真) がんになる10年くらい前から難病の潰瘍(かいよう)性大腸炎を患っており、母の介護も重なって、仕事はしていませんでした。生活上の悩みといえば、とにかく体力が落ちてしまっていることです。うまく食べることができないために、食べる量が減って、カロリーが十分に取れません。なので、なかなか体重が増えません。水も上手に飲めない状態です。
頭頸部がん患者友の会 医師や言語聴覚士通じて紹介も
――みなさん、頭頸部がん患者友の会に参加していらっしゃいますが、どのような活動をしているのですか?
西脇 ふだんは3か月に1回、定期的な会合を開いています。頭頸部がんの治療を多く手がけている病院の医師や言語聴覚士を通じて、様々な病院の患者さんがいらっしゃいます。
山崎 私がかかっているのは都内の別の病院なのですが、紹介されて会に参加するようになりました。
B男 私は、もともと西脇先生のリハビリを受けていたのがきっかけです。あまり友だちの多い方ではなく、手術後は特に話をするのがおっくうでした。患者の会では、いろんな方とお話しすることができて、とてもありがたいと思っています。
A男 私もリハビリを受けるようになって、2018年からほぼ参加しています。最初に行ったときに、わずかしか開かない口で工夫して頑張っている患者さんの姿を見て、すごく感動したのがきっかけです。顔見知りになった人から、「あなた、この前よりも良くなったねって」言われるのは、とても励みになります。

西脇(写真) 同じ悩みを持っていらっしゃる患者さん同士のピアカウンセリングという意味で、会はすごく大切だと思っています。こんな目に遭っているのは世の中で一人きりだとか、自分が一番大変だとか思いがちですが、会に参加したことで、自分より症状が重い方も軽い方もいらっしゃることを知ることができ、自分を客観視することにもつながります。同じ悩みを持つ者同士で、すごく役立つ情報交換が生まれることもあり、当事者の会の醍醐(だいご)味を感じます。
会合が終わった後も、女性同士だと割とすぐに打ち解けて、女子会をつくってお茶を飲みにいったりするのですが、特に男性は、人間関係をつくるのが苦手です。仲間同士でお茶をして、おしゃべりするのも含めて、リハビリテーションだと考えています。こういったところにも、当事者の会の意味があるのかなと思っています。
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