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ストーマ 災害への備え…避難所での処理に課題
大腸がんや 膀胱 がんなどで自然な排せつができなくなると、おなかに穴を開けて「ストーマ」という出口をつくる。台風などの災害時に、患者が避難所で排せつ物の処理をしづらいことが課題となっている。(小屋敷晶子)
患者は20万人
ストーマは、ギリシャ語で口を意味する。腸などの一部を穴から体の表面に出してつくる。人工肛門や人工膀胱ともいう。ストーマがある人をオストメイトと呼び、国内に約20万人いる。
人工肛門は、病気によってつくる位置が異なる。直腸がんや結腸がんなどで大腸の一部が機能しなくなった場合は、機能している部分の端を外に出す。大腸がんが広範囲にわたっていたり潰瘍性大腸炎を発症したりし、大腸の機能が失われた場合は、小腸を使う。
膀胱がんなどで尿を排せつできなくなった場合は、小腸の一部や尿管を使って、人工膀胱をつくる。
排せつ物の量や形状は異なり、装具には様々な種類がある。
装具に排せつ物がたまると、トイレで装具の口を開けて捨てる。場合によってはストーマやその周辺を洗う必要もある。だが、災害が起きた際、そうしたことがしやすい避難所はまだ少ない。日本オストミー協会事務局長の平野純子さん(73)は「処理には多少時間がかかる。避難所に設置されたトイレで行うのは心理的な負担が大きい」と説明する。
装具は、数日ごとに取り換えるものが多い。周囲の視線や臭いが気にならない交換場所の確保も大切だ。しかし、平野さんは「排せつ物には悪いイメージがあり、人には知られたくない、声を上げられないという人も少なくない」と指摘する。
装具3日分携帯
災害時に最も困るのは、装具の備蓄がないことだ。中越地震や豪雨災害などを経験している同協会新潟県支部は、冊子を作成し、オストメイトに日頃から災害への備えをしっかりするよう呼びかけている。
装具の品名やサイズ、メーカー、医療機関の連絡先などはメモし、外出時は最低3日分の装具を携帯する。離れた地域で暮らす知人や親戚などにも預けておく。地震や水害による被害を想定し、自宅では玄関や寝室、2階などに分散して1か月分を保管する。
直腸がんでストーマをつくった熊本県益城町の前田勝さん(78)は、2016年の熊本地震で被災した。自宅は半壊し、約2週間の避難所生活を余儀なくされた。「避難所の仮設トイレはすべて和式で、かがみ込んで便を処理するのは難しかった。4日間ほど使える装具が2枚しか手元になく、不安だった」と振り返る。
同協会熊本県支部長の前田さんは、その後、県や町に働きかけ、今年1月から町の複数の公共施設に患者が個人の装具を預けられるようになった。
ストーマに詳しいPL病院(大阪府富田林市)院長の進藤勝久さん(80)は「個人情報保護の壁で、病院からストーマをつくった人の情報は提供されない。オストメイトは、協会などで人とのつながりを普段から持って、自分から情報を求め、避難所に行った場合は自治体の担当者に申し出てほしい」と話している。
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