訪問診療にできること~最期まで人生を楽しく生き切る~ 佐々木淳
医療・健康・介護のコラム
新型コロナで夫のデイサービス減少……老夫婦の生活は崩壊した
中村茂雄さん(仮名)は88歳の男性。82歳の奥さんと2人で暮らしています。3年前に脳こうそくを起こし、現在は要介護状態です。体の左側にまひがあり、週に3回、デイサービスに行き、リハビリと食事、入浴をしていました。写真が趣味で、診療の時にはいつも自慢のカメラのコレクションを見せてくれます。脳梗塞を起こした後も、時々奥さんと一緒に車いすで撮影旅行に出かけていました。
夫のデイサービスを週1回に減らし、妻の自宅介護が増えた
5月に近隣のデイサービスで新型コロナウイルスの集団感染が起こったという話を聞き、茂雄さんは1か月間デイサービスを見合わせることにしました。その後も、感染のリスクを恐れて、デイサービスの利用を週1回に減らしていました。
奥さんは茂雄さんがデイサービスを利用している間、買い物をしたり、友人たちと集まって食事をしたり、カラオケに行ったり、社交的な生活を送っていました。しかし、茂雄さんがデイサービスの利用を控えるようになってから、奥さんが自宅で茂雄さんの介護をしなければならなくなりました。
また、新型コロナウイルスの感染を恐れ、友人たちともしばらく会っていませんでした。
夫は体重5キロ減少、衰弱が進行して肺炎に
リハビリが減ったためか、7月に入ってから、茂雄さんは一人で動くことが難しくなっていきました。入浴はデイサービスでの週1回だけ、昼食も自宅ではあまり手をつけなくなり、体重も5キロ減少し、全身衰弱が進行していきました。
7月も下旬に入ったある日、奥さんから、茂雄さんがぐったりしていると連絡がありました。往診すると、38度を超える発熱があり、聴診では右肺に雑音が認められ、血液中の酸素濃度が低下していました。状況から肺炎と診断しました。
本人はできれば入院はしたくないと意思表示をしていましたが、食事が取れず、酸素濃度も低下した状態の肺炎を自宅で治療するためにはご家族の協力が必要です。奥さんは介護に協力的な人でしたが、この日は「私には無理です」と一言おっしゃってご自分の部屋に入られてしまいました。茂雄さんと相談し、肺炎がよくなるまで入院をしていただくことにしました。
妻は眠れず、血圧は190まで上昇
奥さんの様子が気になったので、翌日、改めてご自宅に立ち寄ってみました。奥さんはすっかり 憔悴 しきった感じになっていました。実はここ1か月ほど食欲がなく、あまり眠れていなかったとのこと。きちんと整理整頓されていたご自宅も、最近は少し散らかった感じがありました。奥さんは高血圧で他のクリニックに通院していましたが、きちんと薬も飲めていなかったようです。血圧を測らせていただくと、収縮期(上の血圧)が190もありました。奥さんの主治医に電話で状況を報告し、フォローしていただくようお願いしました。
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