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認知症×発達障害 岡崎家のトリプルケア

医療・健康・介護のコラム

救急車には死んでも乗らない! 命より体裁が大事な母と真夏の地獄絵図

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よみがえるトラウマ…私までダウン

 実は私、幼い頃に父さんの吐しゃ物を頭からかぶったトラウマで、自身のつわりでも絶対に吐かずに耐え抜いたぐらい、おう吐に異常な恐怖心があります。実の母親でも、その姿は恐怖でしかなく、パニック症候群による過呼吸でひっくり返ってしまいました。マーライオンのごとく、大量の水分を吐き出す母と、ひっくり返っている娘。もう、地獄絵図……。

 転がっていた携帯をほふく前進で何とか手に取り、頼れるご近所のおばちゃんに、今度は私が「た…す…け…て…」と、ヘルプ要請。駆け付けたおばちゃんは、この惨状に一瞬たじろぎながらも「救急車!」と叫びました。すると「やめて~」と叫ぶ母さん。約1時間前のデジャブです。

 「困ったな~」と言いながらも、冷静沈着なおばちゃんは、吐しゃ物まみれの母さんを着替えさせ、私の背中をさすり続けて、過呼吸を治めてくれました。落ち着きを取り戻した私は、先ほどの医師に電話で相談。「急に水分を大量にとったから、吐き気を催したのでしょう。安静にして、また様子を見て」と、アドバイスを受けました。

助けられ、叱られる

 おばちゃんからは、「こういうときは救急車を呼んだほうがいいよ!」と、厳重注意。恩人の正論に、私はぐうの音も出ませんが、全く納得していない表情の母さん。これだけの目に遭っても、まだ懲りてないんでしょうか……。

 その後、環境省の熱中症予防サイトなどで、高齢者の熱中症について調べてみました。加齢により、喉の渇きを自覚しにくくなったり、母さんのようにトイレの回数を減らそうとして、あまり水分をとらなかったために脱水症状に陥ることも。皮膚の温度センサーも弱くなっているので暑さを感じにくく、冷房を使わず熱中症になることも多いそうで、最悪の場合は手遅れになるケースもあるとか。

 父さんが老人ホームに入所して、ほっとしたのもつかの間。父さん以上に頑固者の母さんの介護には、本当に手を焼きます。(岡崎杏里 ライター)

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認知症×発達障害 岡崎家のトリプルケア

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の日々を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

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1件 のコメント

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義理の母は救急車を呼ばず手遅れに

チロりん

離れて暮らす義理の母は、糖尿病を長く患い、心筋梗塞(こうそく)を起こしました。最初は様子を見て、2日目に近くに住む弟さんに「医者に連れて行って」...

離れて暮らす義理の母は、糖尿病を長く患い、心筋梗塞(こうそく)を起こしました。最初は様子を見て、2日目に近くに住む弟さんに「医者に連れて行って」と電話をしました。自分では救急車を呼ばず、弟さんが、救急車を呼んだ時には手遅れで危篤状態。そのまま他界してしまいました。元気な時から「何かあっても救急車は呼ばんよ」と言って体裁を気にしていました。今年は三回忌です。

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