常喜眞理「女のココロとカラダ講座」
思春期から妊娠・出産、更年期と、変化していく女性の体は様々な健康リスクに見舞われます。そこに、子育てや人間関係のストレスも重なって……。各年代の女性に特有な心身の悩みを乗り切るには、何に気をつければいいのでしょうか。健康診断や会社員のメンタルヘルスにも取り組む開業医、常喜眞理さんが答えます。
妊娠・育児・性の悩み
お刺し身を食べたら急に吐き気と胃痛が…「アニサキス症」一度かかると繰り返す可能性
昨夜から急に 嘔吐 と下痢に見舞われ、「何より、胃がきりきり痛む」と言って、30歳代後半のIさんがやってきた。診察室に到着した時はすでに症状が落ち着いていたが、家族が救急車を呼ぼうかと心配するくらい胃痛がひどかったという。熱もなく、お 腹 の診察をさせてもらうと、強く触っても痛いところはなく、腸の動きも問題なかった。どうも、細菌性食中毒や虫垂炎などお腹の炎症ではないようだ。
昨日の食事内容を聞いてみると、夕食に何種類かの魚をお刺し身で食べたことがわかった。症状が出たのは、それから2時間ほどたった頃だという。経過から、アニサキス症を疑った。
1.5センチほどの幼虫
アニサキスは寄生虫の一種で、人に症状を起こすのは1.5センチほどの白い糸状の幼虫だ。しめ 鯖 やイカのほか、結構多くの種類の魚を生食することで症状が起きる。日本人はよく生で魚を食べるため、アニサキスを一緒に食していることも多い。
Iさんは、数か月前に胃の内視鏡検査をしており、その際、病気がないことがわかっていた。今回の症状も改善しているので、特に処置をする必要もない。ただ、嘔吐したことで、食道や胃の粘膜が荒れているため、数日間、薬を飲んでもらうことにし、血液検査でアニサキスの抗体を調べた。
数日後、アニサキス抗体が「強陽性」であることがわかった。今後は、冷凍処理していない生魚を食べないよう伝えた。
首元が赤くまだらに
20歳代後半のRさんは、「吐き気がしてお腹が痛い」と、友人に連れられてやってきた。苦しそうなRさんの首元をみると赤くまだらになっており、じんましんも見られた。
Rさんは料理人で、この日はお店が休みの日。自宅で魚さばきの練習をしていた。友人を招いて家で試食をしていたところ、急にお腹が痛い、吐き気がすると言って嘔吐したという。それまでは何も症状がなく、下痢や発熱もない。嘔吐といっても、痛みが先行し、吐き気につながっているようだった。
腹部の診察をすると、みぞおちのあたりの痛みが強く、お腹にもじんましんが出ていた。症状と経過から、アニサキス症が疑われた。痛みの症状が強かったため、近くの病院に連絡し事情をお話ししたところ、緊急の内視鏡検査が可能とのことなので紹介した。後日、内視鏡検査でアニサキスを除去することができ、痛みも和らぎ帰宅したと知らされた。
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