ココロブルーに効く話 小山文彦
「ブルーな気分」が悪化すると、脳に問題が起こることも。自分の気持ちを元通りの「鮮やかなカラー」に戻すため、東邦大学医療センターの教授の小山文彦さんが処方箋を届けます。「ココロブルーへの音楽サプリ」として、「おすすめの一曲」もご紹介します。
医療・健康・介護のコラム
【Track4】コロナ禍のうつを抜けて――ある高齢者のうつ病エピソード――
「エイー」「ヤー」「トー!」
夏休みの道場に、子供たちの掛け声が響きます。その姿をほほ笑ましく見守るソウヘイさん(74)は、この町で30年以上にわたり青少年に剣道を指導しています。
多くの若き剣士から、「ソウヘイ先生」と慕われ、保護者や学校関係者からの人望も厚く、剣道は、彼にとって生きがいでした。
コロナ禍と友人の交通事故で
けれども、今年は例年と異なり、集合しての練習はしばらく行われていませんでした。新型コロナウイルス感染症が 蔓延 したことにより、3月中旬から、この道場もいったん閉鎖されていたのです。まだまだ感染の拡大が終息したわけではありませんが、最近になって、万全の対策を講じた上で稽古は再開となりました
ソウヘイさん自身も、約4か月ぶりに道場に立つことができました。
「ここに帰ってこられてよかった」
そうつぶやいたソウヘイさんですが、その理由は、練習が中止されていたからだけではありませんでした。3月下旬から、不眠、食欲低下、気分の落ち込みが続き、うつ病を発症したのです。
2月下旬、ソウヘイさんの友人が交通事故に遭い、近くの病院に入院しました。知らせを受け、早速お見舞いに病院を訪ねたところ、新型コロナ感染予防のためと、受付で面会を断られてしまいました。
ソウヘイさんは、「やむをえないな」と理解はしたものの、「けがをした友達の顔も見られないとは……」と、ずいぶん寂しい思いをしたようです。
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