ペットと暮らせる特養から 若山三千彦
医療・健康・介護のコラム
神経難病と闘う(2)愛犬を乗せた車椅子を押して廊下往復 ホーム入居後、症状が劇的改善
さくらの里山科に入居した渡辺優子さん(仮名)の状態は、がらりと変わりました。渡辺さんが患っていた進行性 核上性麻痺 という病気は、治療法がない難病ですが、その病状が劇的に改善されたのです。その理由は、さくらの里山科の専属職員である作業療法士によるリハビリを受けたこと(※作業療法士が専属職員として勤務している特別養護老人ホームは、珍しいとまでは言えませんが、多数ではありません)、しっかり栄養がとれるようになったこと、介護を受けることにより、起き上がって生活できるようになったこと、規則正しい生活になったこと、そしてナナちゃんの心配がなくなったことでしょう。
手足が思うように動かなくなっていく進行性核上性麻痺のリハビリは大変な苦痛を伴います。だから渡辺さんは、自宅から病院に通えていた頃も、リハビリには積極的ではありませんでした。当然だと思います。治る見込みのない難病にかかり、希望がない状態で人間はつらいことに耐えて頑張るなんて無理ですから。
愛犬ナナちゃんとの生活が生きる希望に
しかし、さくらの里山科に入居した後の渡辺さんは違いました。ナナちゃんとの生活が続けられるという希望ができたのです。ナナちゃんとの生活を続けるために、少しでも動けるようになりたいという目的ができたのです。
そしてリハビリの苦痛を癒やしてくれる存在がいました。もちろんナナちゃんです。いくら希望があり目的があっても、苦痛に耐えてリハビリを行うのは困難です。渡辺さんが頑張れたのはナナちゃんが一緒にいてくれたからです。
当初、なかなかリハビリに思うように取り組めない渡辺さんのために、作業療法士は一計を案じました。渡辺さんに車椅子を押して廊下を歩いてもらうというリハビリを考えたのです。そして、車椅子にはナナちゃんに乗ってもらいました。
このリハビリ方法は、渡辺さんのモチベーションを大きく高めました。いくらつらくても目を下に向ければ、大切なナナちゃんがいるのです。この子のために頑張らねばと心を奮い立たせたことでしょう。ホームの1階の廊下は、50メートル以上の長さがあるので、最初は3分の1も歩けませんでした。それが、全て歩ききるようになり、往復歩けるようになり、ついには3往復もできるようになりました。驚くほどのリハビリ効果です。それにより、手足の動きはぐんとよくなっていきました。
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