ペットと暮らせる特養から 若山三千彦
医療・健康・介護のコラム
神経難病と闘う(1)70代女性「犬を飼ったら共倒れ」 わかっていたが我慢できず…
渡辺優子さん(仮名)は、70歳代前半に、進行性 核上性麻痺 という難病にかかりましたが、しばらくは頑張って一人暮らしを続けていました。いえ、正確には愛犬との二人暮らしです。
何代もキャバリアを飼っていた
渡辺さんは大の犬好きです。特に、上品でかわいらしいキャバリアという犬種が大好きで、これまで何代にも渡ってキャバリアを飼い続けてきたそうです。ご主人を亡くし、お一人になった後は、愛犬が心のよりどころだったそうです。
しかし、70代半ばで、先代の愛犬が亡くなった際、娘さんは次の犬を飼うことに大反対したそうです。無理もありません。進行性核上性麻痺という難病のため、だんだん体が思うように動かなくなっている状況で、犬を飼うことは極めて困難です。自分自身の世話すらままならないのに、犬まで飼ってしまったら、共倒れになってしまうのは、目に見えていますから。
愛犬は心のよりどころ ペットショップで我慢できず
渡辺さんも娘さんの意見に納得されていたそうです。大の愛犬家であるからこそ、年をとって、しかも病気を持っている身で、犬を飼うのは無責任だとよくわかっていたのです。しかし、ご主人を亡くし、お一人で暮らす孤独感の中、しかも難病の不安もある状況で、心のよりどころである愛犬がいないのは、渡辺さんにとって耐えられないことでした。そこで、頭では、もう犬を飼ってはいけないとわかっていても、ついに犬を飼ってしまいました。かつてのいきつけのペットショップで、大好きなキャバリアのワンちゃんがいるのを見たら、我慢ができなくなったそうです。
これが渡辺さんと愛犬のナナちゃんの出会いでした。
娘さんは、ある日、渡辺さんのもとを訪れたら、ナナちゃんがいるのを見て、大変ショックを受けたそうです。それでも、娘さんも、犬を何匹も飼っているほどの、大の犬好きです。こうなったら仕方ない。母親には犬が必要なのだと割り切って、渡辺さんとナナちゃんの面倒を見ることにしました。やや遠方で暮らす娘さんは、それまで月に2回程度、渡辺さんの自宅を訪れていたのですが、それを毎週に切り替えて、献身的に介護に当たりました。
愛犬との家庭生活 3年ほどは穏やかに
それでも3年ほどは、渡辺さんとナナちゃんの生活は安泰でした。渡辺さんはだんだん歩けなくなり、家の中をはって動くようになりましたが、娘さんが、必要な物を全て低い位置に置いたり、洗い物や洗濯、掃除は週に1回まとめてやってくれたりなど、様々な配慮とサポートをしてくれたおかげで、渡辺さんとナナちゃんは穏やかに暮らし続けることができました。
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